OREAD Diary

January 1〜January 31, 2007



January 31, Wednesday 2007

2007年の12分の1が過ぎてしまった。早い。

一日に届くメールは、おそらく200通はくだらないだろう。そのうちの大部分はスパム。今日はそのスパムに埋もれて2通の嬉しいメールが届いた。ひとつは、1月19日にオーリアッドを訪ねてくれたクレイからだった。


  Greetings from California. Thank you for a very pleasant
  evening at Oread during my recent visit. I love your coffee
  and music club, and look forward to spending more time
  there next time Kayo and I visit Tatsuno.

と書かれていた。それに、ぼくがプレゼントした『ガビオタの海』を聞いていると書かれていた。あの晩彼はしばらく洗面所に入っていたかと思うと、スウェットシャートを持って出てきた。着ていた服を脱いでぼくにくれたのである。それは彼が自分で模様をプリントしたシャツとのことだった。

そのお礼に『ガビオタの海』をプレゼントした。このアルバムをプレゼントしたのは、『追憶の60年代カリフォルニア』に対応していて、カリフォルニアの地名がよく出てくるからである。サンタバーバラ、アイラヴィスタ、ガビオタ、フリーウエイ101、サンルイスオビスポ、ワトソンビル、サンノゼ、マウンテンヴューなど。

もう一通はこの日記を読んで、スティーブ・ハウの Portraits of Bob Dylan 手に入れることができたという方からのメール。

   数年前、YES のメンバーが作ったらしいという情報だけで盛岡の CD
   ショップを探し回って見つけ損ねていました。三浦さんのおかげでタ
   イトルもわかり、注文できました。昨日から、聞いています。それぞ
   れの歌い手の個性もあって楽しんでいます。しばらくぶりで聞いた
   フィービー・スノウの声に感動しています。

とあった。拙い日記ではあるが、こんな形でお役に立ててとても嬉しい。しかもぼくの好きな音楽を気に入ってくれたというのだから。


January 30, Tuesday 2007

午前中、辰野病院へ。月に一度の定期検診。毎回待っている間に読む本をもっていくのだが、今日はロジャー・ラヴという人が書いたヴォイス・トレイニングの本をもっていった。

10時の予約だったが、実際に診察を受けたのは11時。読む時間はたっぷりあった。著者が昔、ヴォイストレーナーとして、ジャクソンズと一緒にツアーに出たときのことが書かれていた。

  ヴォイストレーナーとしてジャクソンズと大掛かりなツアーに出たこ
  とがある。マイケルは毎日4時間、発声練習を行った。信じてもらえ
  ないかもしれないが、彼は、偉大なオペラスターのパヴァロッティが
  一日に4時間発声練習をすると聞いて、パヴァロッティにいいことは
  自分にもいいはずだ、と考えたのである。

  I remember when I was working with the Jacksons on a huge
  tour. Michael used to practice his vocal exercises four hours
  a day. I know that sounds crazy, but he'd heard that
  Pavarotti, the great opera star, practiced his vocal
  warm-ups four hours a day, and he figured that whatever was
  good for Pavarotti was good enough for Michael.

マイケルのあの声は天性のものだと思っていた。一日に4時間のヴォイストレーニングを欠かさなかったとは驚いた。

彼には、当然のことながら、発声練習だけではなく、他のメンバーたちとの何時間ものリハーサルがあった。音楽に合わせて全員で踊る練習である。少しでも着地点がづれたり、遅れたりしたら、すべて台無しになってしまう。

凄いと思ったことはあるが、彼の音楽や振り付けに一度も魅了されたことはない。しかし、こういう話を読むと、やはりプロは違う、と思わせられる。

家に戻り、レポートの添削の間に、発声練習。一日4時間は無理でも、せめて20分はしたいもの。

*Roger Love, SING LIKE THE STARS!, New York, Pocket Books, 2003


January 29, Monday 2007


午後南箕輪へ行った帰り、スイミングへ。今年3回目。少なくとも週一回の目標には届かなかったが、3回というのは悪くない。2月はもう少し行けそうである。

先輩から、ぼくの「千の風」の歌詞が観無量寿経の内容を解説する上で都合がいいと聞かされてから気になっていた。グーグルに観無量寿経と風と光と鳥を入れて検索してみたら、たくさん出てきた。

ぼくの歌は、風、光、鳥の順で出てくるが、観無量寿経は中心が光のようだ。光が先ずあって、そこから風と鳥が出てくる。

  八種の清風、光明より出でてこの楽器を鼓つに、苦・空・無常・
  無我の音を演説す。

  如意珠王より金色微妙の光明を涌出す。その光、化して百宝色の
  鳥となる。

「百宝色の鳥」は手塚治虫の「火の鳥」を連想させる。

                    




南箕輪村の大芝公園の東側にかなり大きな農場がある。その農場の小道から撮った南アルプスの山並み。家に戻ってニュースを見たら、南アルプスを世界遺産に申請しようという会議が今日開かれたとか。

どうしてこの山並みにレッテルが必要なのだろう。世界遺産にしようという同じ人たちが、「リニヤモーターカーの早期実現を」と気勢を上げている。何を考えているのやら。


January 27, Saturday 2007

開店前に山岸豊さんとジョン・サンダーズ到着。しばらく、ジョンが所属するロックバンドのCDを聞かせてもらう。来日前にレコーディングして、最近できあがってきたものらしい。ジョンはサックスとハモンドオルガンを担当している。「シカゴというよりウエストコースト風だよね」と山岸さん。

7時過ぎ、歌い手もお客さんも少しずつ増えてきた。最初にぼくが2曲。「カムサハムニダ、イ・スヒョン」と"I Have a Dream"。前者は昨日、あの事故から丸6年が経ち、7回忌を迎えたので。映画も公開されたようである。後者はシカゴ出身のジョンに聞いてもらいたくて。

続いて、山岸さんとジョン。「雪降る夜に小布施で」など。彼らが一緒に演奏するのを何度か聞いたが、ますます息が合ってきた。続いてオーリアッド初登場、ちほねぇ。ギターのサポート、中尾尚さん。「心の季節」など。少し緊張しているように見えたが、実に説得力のある歌詞、歌唱、それに演奏。続いてベーシストの丸山俊治さん。ピアノ弾き語りで自作の日常を歌った歌2曲。オーリアッドへきているうちに自分の歌を書きたくなったとのこと。

ここからオーリアッドの常連ミュージシャンが続く。まず、藤森和弘さん、「人生に勇気」など。藤森さんが歌っている最中に、新年会帰りの団体が入り、客席は満員。大月高志さんがステージに向うと客席から盛大な拍手。「カノン」を含むピアノ演奏。続いて、大月さんのサポートで、ぼくが「千の風」、赤羽真理さんが「旅人の木」「千両梨の実」。続いて、ダニエル・ジリッグ、久々の登場。一ヶ月ほどオーストラリアに帰国していて戻ったばかり。一曲目、 "Unborn"。これから生まれてくる子供に語りかけるお父さんからの愛の歌。新曲。








 

ここからセカンドラウンド。山岸&サンダーズ・ユニット、「時間」など。ちほねぇ&中尾ユニット、「くじける一歩手前」など。藤森さん、「子守唄のように」「住みなれたこの町で」。藤森さん、セカンドラウンドでソロで歌うのは久しぶり。セッションとはまた一味違う味わい。最後は田中創・春日淳也ユニット。「おいでよ今夜は踊ろう」「東京」の2曲。前者は1月6日に初めて聞いた新曲。今日はそのときよりずっと説得力があった。「東京」は何度聞いても感動する。春日さんが今日たたくのはカホン。

グランドフィナーレは、今年の夏にはシカゴに戻るというジョンのために "Sweet Home Chicago"。ボーカル&ギター、田中創;ピアノ、大月高志;サックス、ジョン・サンダーズ;パーカッション、春日淳也;ギター&コーラス、ダニエル・ジリッグ;ベース、丸山俊治。素晴らしい演奏。拍手鳴りやまず、同メンバーで、もう一曲ブルーズ。ここですべての演奏終了。

"Sweet Home Chicago" の余韻の中、その後しばし歓談。



January 26, Friday 2007

朝早く、電気屋さんがやってきて、リビングの天井の電気がつかなくなっていたのを直してくれた。スイッチの部分の問題だった。続いて、水道屋さんがやってきて、ボイラーを点検してくれた。

昨夜、風呂に入っているうちにボイラーが急に動かなくなった。かなり古いものなので思い切って新しくすることに。午後、3時間ほどで、新しいボイラーが設置された。この地に戻って今年の3月でちょうど四半世紀。身体にも、家にも、あちこちガタがきている。

オーリアッド。今晩は、午後編集した昨年12月の年末ライブのダイジェスト盤を聞く。大学院時代の先輩から今朝電話があり、「法話の中で三浦君の<千の風>をかけて、観無量寿経について語ったら、非常に分かりやすいと評判がよかった」とのことで、たくさん注文をいただいた。

「千の風」と観無量寿経とどのように結びつくのか難しいことはわからない。しかし、そう言っていただくのはありがたい。それで、スタジオテイクの「千の風」とともに、ライブヴァージョンも聞いてもらおうと、ダイジェスト盤をつくったのである。「サンタバーバラの夏」の冒頭のハーモニカが「ジョン・レノンに捧げる歌」になっていたり、「次郎」の歌詞を間違えていたり、不備なところはいくつかある。でもぼくのライブ音源としては今までの中で一番いい。

閉店間際、今日も歌の練習。I Have a Dream がほぼ定着した。食器を洗い、床にモップをかけ、外に出ると小雨が降っていた。寒中に雨とは、と思いながら家に向う。今村の旧道に入ると雪になっていた。積もらなければいいが。


January 25, Thursday 2007

夕方、山麓線を南に走りながら、日が長くなったことを実感。右下に広がる松本平がはっきり見える。北アルプスの稜線の上には淡いピンクの夕焼けが広がっている。以前はこの時間、真っ暗だった。

家に戻り、しばらく休み、オーリアッドへ。中に入ると One Too Many Mornings が流れている。スティーブ・ハウの Portraits of Bob Dylan だ。歌っているのはフィービー・スノウ。このアルバムの中でも最高に気に入っている曲。ディランの作品、フィービーの歌唱、ハウの演奏が実に見事にブレンドされている。聞くたびに恍惚とした気分になる。

このアルバムは1999年夏、アイラヴィスタのCD店で偶然見つけたもの。それ以後何度も聞いてきた。本当に素晴らしい。Yesというバンド名は聞いたことがあったが、どんな音楽を演奏するバンドか知らなかった。スティーヴ・ハウというギタリストについては何も知らなかった。あとで彼がディランの大ファンだということを知った。

今晩初めて、クレジットを読んでいて、ドラマーが Dylan Howe という名前だと気づいた。おそらくディラン好きが高じて、息子にディランと名前をつけたのだろうと思った。調べてみたらその通りだった。息子は1969年生まれ。だからこのアルバムが制作された1999年には30歳だったことになる。ということは今でもまだ30代。

閉店前、いくつか歌の練習。11時過ぎ外に出る。かなり冷えている。寒中なので当然といえば当然なのだが。


January 24, Wednesday 2007

毎年この時期は採点や成績付けに追われて忙しい。今年も例外ではない。マルティプルチョイスなら採点しやすいが、レポートの、しかも英語で書かれたものを修正し点をつけるとなると、本当に大変。しかし、ポジティヴに考えれば、脳細胞の活性化に大いに役立っている。ぼく自身の英語の勉強になることも確か。

午前中、ソフィーとフィービーを連れて獣医さんへ。3種混合のワクチン接種。注射の針が入っても鳴き声ひとつ立てなかった。そうそう、ソフィーは体温が38度2分、フィービーは38度5分。猫の平熱は38度以上と今日初めて知った。寒がりなわけである。

I Have a Dream の練習。やはり3拍子が歌いやすい。

今度の飛び入りライブはにぎやかになりそうだ。



January 20, Saturday 2007

開店してしばらくして小穴正幸さん。彼に会うのは昨年の春以来。彼に最初にあったのは、今から10年ほど前か。そのとき彼は岡谷に住んでいたが、現在は転勤して埼玉在住。先ず、サウンドチェックをかね、ぼくが何曲か歌う。その中の I Have a Dream、本来4拍子なのだが3拍子で歌い始めてしまい、最後までそれで押しとおす。この歌は3拍子のほうがいいかもしれない。

トップバッターを小穴さんにお願いする。「ほうき星」など。落ち着いた静かな歌い方。今まで彼を聞いた中で一番説得力があった。次に大月高志さん、ピアノ・メドレー。川島茂さん、「時代がぼくを変えても」など。高く伸びる高音がきれいだ。藤森和弘さん、2曲目に「この命のすべてで」。高校時代に友人と共作した曲。歌詞も曲も高校生の域を超えている。前半の最後は、平田賢司さん。川島さんの友人。インストラメンタルと沖縄の歌。






 

後半のトップ、大月さんのサポートでぼくが「千の風」。続いて小穴さん、「レクイエム」がよかった。「けれども季節はしたたかに生き延びて/今年もまた春はけなげに訪れてくれました」。「したたかに」「けなげに」などの副詞が新鮮だった。赤羽真理さん、ご存知「旅人の木」と「千両梨の実」。サポートは大月さん(pf)と春日淳也さん(perc)。次に川島さん、同じサポーターでカバーを2曲。風貌といい歌声といいそっくり。今夜の最後は藤森さん、同じく大月・春日ユニットのサポートで「子守唄のように」など。いつ聞いてもこの歌は心に響く。

その後、歓談。最終的にオーリアッドを出たのは12時過ぎ。



January 19, Friday 2007

オーリアッドは土曜日以外はお客さんが少ない。それでも金曜日は時々忙しくなることがある。今晩も、何人かのお客さん。その中に、以前土曜日に歌ったことのあるFさんが、義理のお兄さんとやってきた。

彼はカリフォルニアはサンタクルズ近郊に住むアメリカ人。ラストネームは『ライ麦畑でつかまえて』の主人公のファーストネームと同じ。小学校高学年でビートルズの洗礼を受け、その後、ディランの Bringing It All Back Home, High Way 61 Revisited, Blonde on Blonde を聞いて青春時代を過ごしたというのだから、話が合わないはずがない。

その後、酔うと宇宙論や宗教論を語ることを好むT先生も加わり、喧々諤々面白い夜になった。その話の中で、ホールデン氏がカール・ユングやジョセフ・キャンベルの神話論に言及するなど、共通の関心が多いことに驚く。

月曜日にはカリフォルニアに戻るとのこと。また辰野にくるときは寄ってもらいたいものである。


January 18, Thursday 2007

朝から松本。夜はオーリアッド。

デイヴィッド・ブーシェ(David Boucher) の Dylan & Cohen, Poets of Rock and Roll を読み始めた。その冒頭にスティーヴン・スコービの次のことばが引用されていた。

  厳然たる事実は、もしディランが、唯一無比の、この時代のもっ
  とも偉大なソングライターならば、同じ次元でまともに取り上げ
 ることのできる名前は、レナード・コーエン以外にはないという
 ことである。
 
 What remains true is that if Dylan is, sui generis,
  the greatest song-writer of the age, Leonard Cohen is
  still the only name that can seriously be mentioned in
  the same breath.


このことばに同意しない人も多いだろう。でもぼくは諸手を上げて賛成する。このふたりの音楽と出会わなかったら、ぼくが今も歌っていることはなかっただろう。

11時過ぎ閉店。今村の旧道に入るとアスファルトの上にうっすらと白いものが。積もる心配はなさそうだ。



January 17, Wednesday 2007

今朝起きたら雪ではなく雨だった。助かった。

開店直後電話があり「お店をやっているか、『千の風』のCDがあるか」との問合せ。両方とも肯定的に答える。それからしばらくして隣町から3人の方がやってきた。そのうちの一人は、ずっと前オーリアッドに来たことがあるとのこと。その時ぼくの「千の風」を聞いてCDがほしかったが、まだCDにはなっていなかったとのこと。

紅白で「千の風になって」を聞いて、ぼくの「千の風」を聞きたくなったらしい。ありがたいことである。「千の風」を含む数曲のミニライブ。


January 16, Tuesday 2007

3種混合のワクチンを生後2ヶ月ぐらいには受けたほうがいいとのことで、少し遅れたが、ソフィーとフィービーを獣医さんに連れていった。

検査の結果、親からもらった虫がいることが判明。先ず虫を駆除するためのクスリを飲むことに。ワクチンは来週ということになった。



昨年11月22日に、ふたりをもらいにいったとき、その家のおばさんは、「オスですかメスですか」というぼくの問いに、ふたりをひっくり返して「メスです」と断言した。その家には猫がうじゃうじゃといる。彼女の判断が間違っているとは夢にも思わず、ソフィーとフィービーという女の子の名前をつけた。しかし、最近、例のところがふくらみ始めた。ひょっとしたらと恐れていたが、今日獣医さんから明確に「オスです」と宣告された。

うーむ。どうしよう。名前を変えるべきか。いろいろ迷ったが、ソフィーとフィービーのままでいくことにする。名前というのは不思議だ。最初は、この子たちにそぐわないと思ったこともあったが、今ではソフィーとフィービー以外は考えられない。

ジョニー・キャッシュのヒット曲に「スーという名の少年」がある。父親から女の子の名前をつけられた男の子が、恥かしい思いをしたり、いじめられたりしたが、そのことでかえって、強い男に成長するという歌。

ソフィーとフィービーには名前がもとでいじめられる心配はない。それに、調べてみたらフィービーはまれではあるが男の子の名前にもあるようだ。


January 15, Monday 2007

不思議なことがあるものだ。今朝郵便受けに宛名がローマ字で書かれた2つの書籍小包が入っていた。ひとつは Amazon.com を通して注文しておいた古本の Dylan & Cohen, Poets of Rock and Roll (ディラン&コーエン―ロクンロールの詩人たち)で、もう一冊は William James(ウイリアム・ジェイムズ) という本。後者の送り主は Pico Iyre(ピコ・アイヤー) だった。ピコは一度、わが家を訪ねてくれたことがある。冬期オリンピックが長野で開催された年だった。

本に挟まれていたカードには次のように書かれていた。

   最近この本を読んだとき―分厚いけれど、とてもいい本―あな
  たのことが頭に浮かびました。実際、レナード・コーエンの話
    題が出たり、あなたのレコードを聞いたり、共通の友人マイケ
    ルに会ったりするときはいつも、よくあなたのことを思い出し
    ます。この本が興味深いと、あなたも思ってくれたらいいので
    すが。

ピコは旅行記の作家として知られているが、レナード・コーエンとも親しく、コーエンについて、本や雑誌や新聞に多くの記事を書いている。

正直なところ、ピコのことはぼくの脳裏からすっぽり抜け落ちていた。彼をもっとも必要とするときに、彼の方からやってきてくれた。今年はレナード・コーエンと深くかかわる年になりそうである。

早速『千の風』をお礼に送ろうと思う。

*David Boucher, Dylan & Cohen-Poets of Rock and Roll, London, Continuum, 2004
*Robert D. Richardson, William James, Boston, Houghton Mifflin, 2006


January 14, Sunday 2007

 

車山へ行ってきた。スキーをしにではなく、先月わが家に泊まったNZの二人の女性に会いに。17日にNZに戻るというので。実はそのうちの一人はわれわれの義理の娘。彼女と彼女の友だちが、大学の日本語の先生の推薦で、「奨学金」をもらい、一ヶ月、車山で働きながら日本語を勉強したのである。一ヶ月、教室ではなく、実地に生の日本語に触れることで大いに勉強になったようである。



彼女たちの元気な笑顔に会えてよかった。しかし、何よりも、車山の青空を見ることができてよかった。元来、寒がりで、また貧乏性で、ウインタースポーツには、子供時代の田んぼの下駄スケートと裏山のソリすべり以来縁がなく、冬のスキーリゾートに足を踏み入れたのはこれが初めて。車山への道路には雪がまったくなく、これならまた来たいと思ったほど。スキーをするためではなく。青空を見るために。カメラでは到底その美しさを写すことはできない。

そうそう思い出した。冬のスキーリゾートは初めてではなかった。大学一年の冬、高校時代の担任の先生に連れられて、同級生たちと霧が峰へスキーに行ったことがある。そのときの「不幸で滑稽な」体験が、ぼくをそれ以後スキーから遠ざけることになる。その体験についてはどこかに書いた記憶がある。


January 13, Saturday 2007

今年2度目の飛び入りライブ。サウンドチェックをしているところへ、藤森和弘さん。先週は大雪のため断念したとのこと。近所のお年寄りの家の雪かきをしてあげて、疲れてしまったようだ。分かる分かる。トップバッターを藤森さんにお願いする。一曲目、昨年もよく聞かせてもらった「人生に勇気」。彼は去年はいい歌をいくつか書いた。藤森さんのあと、ぼくが「千の風」と「父よ」を歌う。久しぶりに聞きにきてくれた人から、先月お父さんが亡くなったと聞かされたので。諸行無常。死は誰にとっても避けられぬもの。分かっていても、肉親の死は切ない。

次に初登場の山本諭さん(ケーナ&サンポーニア)と久々登場の中村進さんのユニット。二人とも職業は大工さんで、二人でやるときは、The Carpenters と名乗っているとか。南米の楽器の乾いた音がオーリアッドにはよく合う。続いて中村さんのソロ。「カントリー・ブルー」がよかった。彼の無駄を省いた簡潔なギターワークは格別である。赤羽真理さん。「旅人の木」と「千両梨の実」。大月高志さんのピアノと太田裕士さんのサックスのサポート。赤羽さんの歌には「品格」がある。

続いて、これまた久々登場の篠原一弘さん。3曲目の「コースケのうた」はピアノで。いつ聞いても感動する。いつ聞いても心に届く言葉がある。最初に篠原さんがオーリアッドで歌ったとき、コースケ君はカメラをもってお父さんの姿を追っていた。3、4歳だった。彼は今小学校一年生とのこと。






次は、昨年、5月以来、オーリアッドにきてくれるようになり、オーリアッドのステージを大いに盛り上げてくれた太田裕士さん。ピアノ弾き語りで「虹の中へ」と「宇宙の歌」。スケールの大きな歌。否定的な歌は歌いたくないという彼の「哲学」が感じられる。次に、大月高志さんのピアノと太田さんの新しく手に入れたというソプラノサックスとの improvisation。そして、大月さんの「カノン」独奏。オーリアッド再開以来何度も聞かせてもらった曲。何度聞いても飽きることがない。何度聞いても感動する。

そのまま二人に残ってもらい、藤森さんが「子守唄のように」「住みなれたこの町で」。彼の無骨な外観(失礼!)の中に潜む優しさが伝わってくる。続いて、山本、中村、太田の三氏のセッション。「コンドルは飛んでいく」。最後は、中村さんのブルーズ「風の通り道」。大月(pf)、篠原(g)、山本(samponia)、太田(sax) 4氏のサポートで一大セッション。大いに盛り上がる。






興奮冷めやらず、閉店時間を過ぎてもしばし歓談。家に戻ると、今夜も満天の星空。


January 12, Friday 2007

寒い日。暖房をフルにつけてもなかなか暖まらない。

レナード・コーエンの Recent Songs (1979年)と Various Positions (1984年) の2枚を聞く。前者の対訳はぼくが担当したが、後者はぼくではない。両方とも好きなアルバム。Recent Songs はレナード・コーエンのお母さんが亡くなった直後に録音されたもので、お母さんへのレクイエムとも言えるアルバム。

Various Positions の一曲目の Dance Me to the End of Love は特に好きで、昔、オーリアッドバンドのレパートリーにも入っていた。今夜このアルバムを聞きなおして、なんといい歌がたくさん入っているのだろうと思った。Halleluja, The Captain, Heart with No Companion, If It Be Your Willなど。

20代の初めに Suzanne と Bird on the Wire ですっかりファンになってしまったソングライターに、40年近く経ってからも、同じように心ときめかせることができるのはなんて幸せだろう。Here's to you, Leonard!

後半、お客さんからのリクエストで何曲か歌う。「碌山」を聞いた一人の人が「目の前に碌山さんが現れて、実際に会ったような気分だった」という主旨のことを述べられた。ぼくの歌を聞いて「情景が目に浮かぶ」という感想はよく聞く。しかし、「碌山が目の前に現れた」という感想は初めてである。

今夜も家に着き、車から降りて、空を見上げる。孤独と希望、悲しみと喜びがないまぜになったような気持ちを抱きながら。そこには今夜も「冬の星座」の世界が広がっている。



January 11, Thursday 2007

一日中松本。朝はそれほどでもなかったが、夕方暗くなって戻るときの山麓線はこわかった。まだ雪が残っているところがある。

家に着き、しばらく休んでオーリアッドへ。今日はジブラーンの会のある日。ぼくは2階の英語教室へ。

トミー・ハンコックのLubbock Lights というアルバムを聞きながら、Zen and the Art of the Texas Two-Step の続きを読む。うーむ。ぼくが想像していた以上に、トミー・ハンコックはヒップだ。60年代のカウンターカルチャーというか、あの時代の若者たちが考えていたことを、75歳を過ぎた今でも生きている。

こういう人に会うと、自分自身の中途半端ぶりが浮き彫りにされるようで、少々恥かしい。そして猛烈に羨ましくなる。

  私のダンスの教え方は、パートナーに次のように言うだけ: 音楽
  に集中し、身体の動きは身体にまかせておけ。

この言葉はダンスだけに限らないだろう。彼は別のところで、バックミンスター・フラーの「水面に小石をスキップさせる行為は他のいかなる行為に劣らず重要である」という主旨のことばを引用している。


January 10, Wednesday 2007

昨年9月、トミー・X・ハンコックからもらった Zen and the Art of the Texas Two-Step という本を最初から丁寧に読み直し始めた。副題は The Book on Dancing。ざっと目を通してだけではわからないこの本の隠された意図がおぼろげながらわかった気がした。how to dance を語りながら how to live について書いている。

「バラッド・オブ・トミー・ハンコック」を書くために参考にしようと思ったのだが、逆に難しくなった。トミーがこの本で言おうとしていることをわずかでも歌の中に反映できたらいいのだが。

雪が降ってから夜になると冷え込むようになった。冷え込めば冷え込むほど、空はさえ渡る。家に戻り、車から降りると、そこはまさに「冬の星座」の世界。

  木枯らし途絶えて冴ゆる空より
  地上に降りしく奇すしき光よ
  ものみな憩えるしじまの中に
  きらめき揺れつつ星座はめぐる


January 9, Tuesday 2007


  雪白し 夢に生きたる 我が身かな


碌山研究家 N先生からいただいた年賀状に書かれていた句。これを読んで「ああいいなあ、わかるなあ」と感じた。儚く消えてしまう雪。追いかけても追いかけても届かない、それでも追い求めずにはいられない夢。

柴山全慶老師の辞世の句の前半は「人生は雪を担いで、井戸を埋めるようなもの」というような意味だった。雪はとけてしまい、いつまでも井戸は埋まらない、それでも雪を担いで井戸を埋める。

大雪に呻吟しながら、今年も夢を追い求めよう、埋まることのない井戸に雪を運ぼう、と思う。


January 8, Monday 2007

今朝は昨日一昨日と2日続きの雪かきで疲労困憊。身体の節々が痛む。これだけ降ると一ヶ所でも大変だが、家とオーリアッドと2ヶ所ある。プラス、村の旧道の一部も。昔は、雪かきは運動不足の冬には必要かつ有用な運動だ、などとうそぶいていたが、この歳になると少々こたえる。

午後は何度も試行錯誤を重ね、先月22日、吉祥寺のマンダラ2で行われた「第13回年末ライブ」の音源から「千の風」をトップページにアップした。My Music の中から「千の風」のファイルをプロバイダーに何度送っても音が出てこない。あとで、MP-3の音声ファイルも別にFTPツールを通して送らなければいけないということが判明。何とか音が出るようになった。

ぼくのコンピュータにはMP-3 Playerというのはなくて、RealPlayer と Windows Media Player が入っている。クリックすると RealPlayer のほうから音が出てくるようである。

もし時間がありましたら(というのは最初は音が出始めるまでかなり時間がかかるので)、みなさんのコンピュータでも音が出るかどうか試していただければ幸いです。もしこれでうまくいくようでしたら、また他の曲も追々アップしたいと思います。

*「千の風」:三浦久(vo, g)、野間義男(g)、太田裕士 (sax)、石崎信郎 (engineer)。12/22/06、吉祥寺マンダラ2にて録音。

*「千の風」がどのようにできたかは、次のエッセイを参照して下さい。


January 7, Sunday 2007


朝起きたら雪が降っている。昨夜からふり続けたようで、40センチから50センチは積もっている。庭のテーブルに積もった雪を見るとその量がわかる。ソフィーとフィービーにも雪を体験させようと外に連れ出す。興味津々という顔つきで見ている。





猫といえば、ぼくのホームページを制作管理していてくれる gotta さんの年賀状に猫の写真があった。可愛い猫である。彼の許可を得て、ここにその写真を載せることにする。

本当に不思議なことに、11月に2匹の子猫がやってきてから、テレビや新聞など、猫がやたらと目につくようになった。昔妻が妊娠したとき、世の中にはなんと妊婦が多いのだろうと思った。そのときに似ている。

gotta さんの年賀状の猫の写真も以前だったら、まったく気にとめることがなかったかもしれない。名前は「ほたる」、性別「雌」、年齢「17歳」とのこと。顔を洗っているところかと思ったら、日向ぼっこをしているところとのこと。左手の仕草が可愛い。優しい顔をしている。


January 6, Saturday 2007

本年度最初の飛び入りライブ。大雪のため、参加を予定していた何人かが来れなくなり、こじんまりとしたライブになった。

サウンドチェックを兼ねて昔の歌「どっちでもよいのです」を歌ってから、赤羽孝昌さんにトップバッターをお願いする。The Water Is Wide の日本語ヴァージョンを含む2曲。もう1曲はタイトルを聞きそびれたが「ぼくが君のためにできること」というようなフレーズが入る長い歌。詩の朗読のよう。続いて大月高志さん「カノン」のショートヴァージョン。この曲のショートヴァージョンを聞くのは初めて? 次に赤羽真理さん、「旅人の木」「千両梨の実」(with Takashi Otsuki on the piano)。3曲目はソロで「鹿のように」。次にぼくが「千の風」「門」「フィールド・オブ・ドリームズ」(with Takashi Otsuki on the piano)。「千の風」の大月さんのピアノがよかった。3曲目は赤羽真理さんのリクエストによる。



 

ここから後半。田中創さん、3曲目に「東京」。1曲目はブルーズ。彼の巧みなブルーズギターにはいつも感心させられる。簡単に軽々と弾いているように見える。春日淳也さん、久々に歌う。「トンネルのうた」など。赤羽真理さん、「人生の海の嵐に」など。ぼくが「オーリアッド・バンドの歌」をフィーチャーした「メドレー」。そして最後に田中(vo)、大月(pf)、春日(perc)三氏のセッション。3曲目は、一昨日書いたというオリジナル。「東京」とは印象がかなり違うダンスミュージック。50年代のロックンロールを彷彿させる。今年は田中さんのオリジナルをたくさん聞くことができそうだ。



 

いつもより早めにライブ終了。その後しばし歓談。田中さんから、ブルーズギターの初歩の初歩を教わる。次に彼に会うときまで練習しよう。夕方止んでいた雪がライブの途中また降り出した。11時過ぎ閉店。


January 5, Friday 2007

午後遅く久しぶりにスイミングへ。あまりに久しぶりなので、身体をならすため、泳ぐ時間は少なめに、サウナを長くする。サウナの中で常連のNさんに会う。週に4回はきているとのこと。週4回は無理。せめて週1回は来たいものだ。

彼の奥さんは舟木さんのファン。奥さんが、「舟木さんが<千の風>を歌った」と言っていたらしいが、それは何かの間違いだろう。

石崎信郎さんからマンダラ2の年末ライブの音が届いた。さっと聞いてみた。全体的に悪くないが、「サンタバーバラの夏」「一通の手紙」「カムサハムニダ、イ・スヒョン」「千の風」「メドレー」「新しい光迎えよう」が特にいいように思えた。「千の風」はCDよりもゆっくりと歌っていて、より説得力があるように思えた。「メドレー」は想像していた以上に躍動感があった。

「I Have a Dream」は悪くないが、口先だけで歌っているように響くところがある。特に出だしのところ。「ガビオタの海」はEのキーで、ピックのストロークで弾いているが、キーを下げて、フィンガーで弾いたほうがいいかもしれない。「次郎」は太田裕士さんのサックスも野間義男さんのギターもパーフェクトなのに、ぼくが言葉を間違えている。

岡谷のHさんから、今年も立派な日めくりの暦をいただいた。感謝。

明日は飛び入りライブ。天気が悪くなるとの予報。大雪にならなければいいが。



January 4, Thursday 2007

暖冬とはいえ、一週間ぶりのオーリアッド。冷え切っている。昨日買った赤唐辛子の成分カプサイシン入りレッグウォーマーが威力を発揮。

前半英語教室。後半、今日届いたばかりの Take This Waltz/A Celebration of Leonard Cohen を読む。レナード・コーエン60歳の誕生日を記念して、日本式に言えば、還暦の祝いに、彼を知る多くの人が寄せた文章や詩を集めたもの。 彼が生まれたのは1934年9月21日。この本は1994年に出版されている。

ジュディ・コリンズが自分の歌を書き始めたのはコーエンの勧めによるものらしい。

  ぼくにできるなら、君にもできる。

アレン・ギンズバーグが次のように書いているのも興味深い。

  彼の歌詞は年をとるにつれてますますよくなっている。若々しい精
  神の証拠である。

1968年の夏、ケン・ノリスは、大学の新入生オリエンテーションに参加するため、汽車に乗り、買ったばかりのコーエンの詩集を読んでいた。その中のひとつの詩 "Owning Everything" (すべてを所有すること)が彼の人生を変えた。その詩が彼に一生を詩に捧げる決心をさせる。そのときケン・ノリス、17歳。

  そのことは疑いの余地がない。この詩人がぼくの人生を狂わせたと
  いうことは。ありがとう、レナード。

ノリスが「この詩人がぼくの人生を狂わせた」と語ったのは、実はレナードの言葉を借用したのである。アイラ・B・ネイデルによれば、1949年、15歳のコーエンは、スペインの詩人フェデリコ・ガルシア・ロルカの詩集を読んだとき、次のようにまわりの者たちに語ったという。

  ロルカがぼくの人生を狂わせた。彼の憂鬱極まりないヴィジョンと
    説得力あることばで。

興味のつきない本である。人生が狂わされるほどの人やものに出会えるかどうかは卒啄同時。碌山は「考える人」の前で動けなくなった。そのとき彼の人生は完全に「狂わ」された。



January 3, Wednesday 2007

今日で三が日も終わり。午後は買い物に。毛糸のレッグウォーマーなるものを買った。早速はいてみた。これはいい。暖かい。

昨年後半、ジョニー・キャッシュのサンクエンティンのライブ盤からヒントを得て、曲のさわりだけをつなげて歌う試みを始めた。夜、しばらくぶりにギターに触り、昔のいろんな曲をでまかせに歌ってみた。

ぼくの昔の歌には3拍子のものが多い。でも3拍子と4拍子をまぜるのは難しい。キーを変えるのも大変。それで、キーはすべてB、拍子はすべて4拍子で歌う。4拍子では歌いずらいものもあるが、「パーティーは終ったよ」とか「ボブ・ディランに捧げる歌」は4拍子でも充分歌える。長い間歌わなかった昔の歌が、蘇えるようで面白い。

まだマイナーの曲を組み込むことができない。それができれば、レパートリーが広がるし、雰囲気も変わるだろう。マイナーな曲だけのメドレーを考えてもいいかも。

明日からオーリアッド再開。


January 2, Tuesday 2007

あけましておめでとうございます。

わたしたちも大きくなりました。お正月はいいですね。「猫ちゃん福袋」を買ってもらいました。いつもの固いキャットフードばかりでなく、いろいろなご馳走が入っていましたよ。食べては寝てのお正月。極楽、極楽。今年もよろしくお願いいたします。

ソフィーとフィービーより。




January 1, Monday 2007

明けましておめでとうございます。

2007年のオーリアッドの営業は1月4日(木)から、最初の飛び入りライブは1月6日(土)です。歌いに、聞きにお出かけ下さい。出演希望者は前もって連絡いただけるとありがたいです。

今年も、どんな出会いが待っているか、どんな歌が飛び出してくるか、楽しみです。

先日東京へ歌いに行ったとき、ある人から「オーリアッドが辰野にあるのは奇跡だ」と言われた。比喩的な社交辞令と受け止めたが、その人が言うように、オーリアッドが、無から有を生み出す「奇跡の場所」になれたら、どんなに素敵だろう。オーリアッドが、イエスが水をワインに変えたように、触媒となって、新しい歌を創り出す空間になれたら、どんなに素晴らしいだろう。

オーリアッドの初夢。



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