OREAD Diary May 1〜May 31, 2004

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May 31, Monday 2004

昨日は三重県河芸(かわげ)町西教寺で開かれた「第2回三浦久コンサート」で歌った。ぼくが歌っている写真は、昨年に引き続き聞きにきて下さった鈴鹿高校の桂山先生に撮っていただいたもの。コンサートの詳細については三浦久HPの掲示板で。

 

夕方、お寺から歩いて5分のところにある海を見に行った。山の麓に住んでいるので、たまに海を見るといいなと思う。今は昔、サンタバーバラの海辺をよく歩いたものだ。ただ海に向かって立つと、海の広さに対して自分がいかに無防備でちっぽけな存在かを思い知らされる。1970年8月、四国遍路の途上、室戸岬でも足摺岬でも、海の広さに圧倒された。時には恐怖心さえ抱いた。「山懐(やまふところ)」ということばがある。山に囲まれた生活がぼくには合っているようだ。

 


ご住職の保井さん、奥さん、お母さんには大変お世話になった。今度一度、山に囲まれた辰野町を訪ねてほしいものである。海を毎日見て生活している人たちは、山に向かって立ったとき、ぼくとは違う感慨を抱くに違いない。


May 29, Saturday 2004

飛び入りライブデー。オーリアッドで使ってーいるノート型パソコンのウイルスバスターの「契約期限がそろそろ切れる」というメールが何度も届いたり、画面にポップアップが出たりしていたので、過去何度か「ウイルスバスター2004」への更新を試みたが上手くいかない。今晩店に入り起動すると、「期限が切れて2日」のポップアップ。なんとか更新しようと悪戦苦闘しているところへ、篠原一弘さん登場。わからないことは聞くに限る。篠原さんに、どうしたらいいでしょうと聞くと、こともなげに更新してくれた。その手際よさに感嘆していると、その道のプロとのこと。ありがたかった。

昨夜の「よしだよしこコンサート」の打ち上げが、まさに「飛び入りライブ」状態で、今夜は「常連の歌い手」が少ない。お客さんも皆無、と思っていたら、ぼくの高校の上伊那支部の同窓会帰り人たちが入ってきた。実はぼくは今日の午後伊那市で7、8年前にぼくのクラスにいた学生の結婚披露宴に呼ばれて同窓会には参加できなかった。

まずぼくが「アルバカーキの空は今日も」「千の風」「碌山」を歌い、次に篠原さんに歌ってもらうことにした。「ひまわり」そして「こうすけのうた」。

  君の名前を考えながら、ひとりで祝杯をあげた 
  あんまりいいのがうかばなくて、ひとりで何杯も飲んだ
  ひろい心を持ち、誰かのために優しくできる 
  大きな人になってほしいと君の名前をつけた

いつ聞いてもいい歌だ。同窓生たちもしきりに感心している。当の弘介くんは、自分のことが歌われているのを知ってか知らずか、いつものコーナーでお母さんに絵本を読んでもらっている。



次に篠原さんの伴奏で、同窓生たちの「見上げてごらん夜の星を」「バラが咲いた」。次に元県議が自作の「翔く風」を弾き語りで歌う。それを聞いて篠原さんがピアノの伴奏に入る。若干の試行錯誤のあと、ピタリと合う。いい感じだ。そのあと垣内氏が「ボクサー」と「くよくよするなよ」を英語で歌うがいずれも途中まで。彼はギターも歌も上手い。しかし、若干練習不足のようだ。あるいは飲みすぎか。





さらに遅くなって、Karasawa Hitoshi さん登場。彼はぼくの記憶が正しければ、今回3回目の登場。彼は、過去2回とも、どちらかというとマイナーな英語の歌を歌った。今回も、John Welton の Love Song と King Crimson の Night Watch。オーリアッドの雰囲気に慣れてきたのか、以前に比べてリラックスして歌っていてとてもいい。自作の歌もあるとのことなので、できたら次回はそれを聞かせてもらいたいもの。

さらに遅く、同窓会流れの2人が、外国人従業員のいる店経由でくる。バンドの練習を終えた大月さんと栗林さんもきていたので、大月さんに「パッヘルベルのカノン」を同窓生たちに聞いてもらいたくてお願いする。クラシック音楽が好きで自らもフルートを吹く福島氏がしきりに感心していた。大月さんのバンド「香月!」は6月5日(土)の飛び入りライブに登場。みなさんに勧めておいた。

 


明日は、午後3時、三重県河芸町西教寺で歌うので、12時までには帰るつもりが、かなり過ぎてしまった。でも大いに飲み語ることができてよかった。

最後に、篠原さん、今日は本当にありがとう。ウイルスバスターが更新できて一安心です。



May 28, Friday 2004
「よしだよしこコンサート」、素晴らしかった。よしださんの歌、声、それにギターを堪能した。ギターが上手だとは聞いていたが、上手な人にありがちな押し付けがましさのない自然なギター。そしてなんといっても、彼女の裏声と地声の断絶のない変幻自在なボーカル。あっという間の2時間。

「つらいときはもうごめんだ」「命の河」「Donut Man」「扉」「風景」「あなたは焚き火に照らされて」「砂の唄」など、CDで聞いて知っている歌をはじめ、知らない歌、新曲もたくさん聞かせてくれた。アンコールで「風景」を歌うときには、立ち上がって客席に下りて歌う。マイクを通さない彼女の自然の声は実にいい。



よしださんの歌には、「つらいときはもうごめんだ」「命の河」のように古いアメリカの歌に独自の詩をつけて歌う歌が多い。そしてそれはどれもカバーというレベルを超えて、よしださん自身の歌になっている。

また彼女が作詞作曲した歌にもいい歌が多い。トピカルな内容をもつ「砂の唄」もそのひとつ。

  遠い昔、男たちは砂の上に神様をつくった
  そしてある日、男たちは 
  砂の上に燃える水を見つけた
  燃える水はどうしてか
  何度も何度も男たちを戦にかりたてる
  遠い昔、女たちは砂の上に暮らしをつくった
  そしてある日、女たちは 
  砂の中に笑い声をうめた
  燃える水はどうしてか
  何度も何度も
  女たちを悲しみにかりたてる

打ち上げにも多くの方が残ってくれた。また遅れてきた人たちも加わり盛り上がった。彼女のあとではちょっと歌いづらいが、やはり、よしださんを歓迎する意味でも、オーリアッドに集まる人たちの歌や演奏を聞いてもらいたいと思い、お願いする。みなさん躊躇していたが、まず、小宮山さんがよしださんのローデンのギターを借りて1曲。クラシックギターではないけれど、エクストラライトを張ってあるとのことで、それほど違和感なく弾けたようだ。その後、芦部さんと松沢さんに「すこやかに」をお願いする。前日39度の熱が出て点滴を打ったという芦部さんだが、いつもの如くさわやかな歌声。



ここで、遅れてきた人たちのために、よしださんに再度歌っていただくことにした。3曲目に、本番で歌うかどうか迷ったという「ゴンドラの唄」。驚いた。この歌を聞いて、「千の風」を歌いたくなった。それに「碌山」も聞いてもらった。「碌山」には水野哲雄さんにリードをつけてもらった。次に、よしださんの友人の丸山圭子さんの息子さんとバンドを組んでいたという大月高志さんが登場して、よしださんとセッション。よしださんのブルーズ風「ケセラセラ」に大月さんのピアノ。今夜のハイライトのひとつだった。次に長島功さんが「無縁坂」を歌う。最近急に上手くなったような気がする。



次に水野哲雄さんが、今年3月、6年生を送り出したときの気持ちを歌った新曲を歌う。卒業していく子供たちも感激しただろうが、それ以上に先生が感激している気持ちが伝わってくる。最後にぼくもよしださんのローデンに触りたくて、「アルバカーキの空は今日も」を歌う。よしださんが長島さんのマーチンで伴奏をつけてくれた。リズム感の悪いぼくが、よしださんを横にして、ますますリズムを狂わせてしまった。



最終的に終わったのは12時を過ぎていた。でも意外と疲れていなかった。いやむしろ元気になっていたくらいだ。よしださんのギターと声には人を癒す何かがある。


May 27, Thursday 2004

前半、セカンドウインド英語教室で教え、オーリアッドに戻ると大月高志さんが友人と飲んでいた。6月5日の飛び入りライブで電子ピアノを使いたいので、ステージのサイズを測りにきたとのこと。彼のバンド「香月!」のライブで感心することは、そのたびに何か新しいことを試みることである。電子ピアノの変幻自在の音が入れば、「香月!」のステージはまた一段と映えるに違いない。まだ「香月!」の演奏を聞いたことのない方は是非一度6月5日、聞きに来て下さい。

長島功さんも友人と飲んでいて(といっても彼はノンアルコール・ビールだったが)、明日の保育園の親子遠足の話をしていた。宮田村の大きな滑り台のある公園へ行くとのこと。

大月さんも長島さんも明日のよしだよしこさんのコンサートに来てくれることになっている。そうそう、赤羽真理さんも開店直後チケットを買いにきてくれた。I get by with a little help from my friends.

明日の「よしだよしこコンサート」は、素晴らしいコンサートになりそうな予感がする。


May 26, Wednesday 2004

午後遅くスイミングに行き、そのあとオーリアッドへ。明後日オーリアッドで歌ってくれることになっている、よしだよしこさんの『ここから』というアルバムを聞きながら、マディー・ウオーターズの復刻盤『アイム・レディ (I'm Ready)』のライナーの翻訳。かなりはかどった。

『ここから』の中で印象に残った歌は「つらいときはもうごめんだ」「命の河」「あなたは焚き火に照らされて」「Donut Man」「扉(レクイエム)」「風景」など。それらの歌はもちろん、すべての歌が、まるでホーミーの歌のように心を静めてくれる。

「風景」を聞いたとき、どこかで聞いたメロディだと思ったが、どうしても思い出せない。帰りの車の中で、そのメロディを口ずさんでいて、今は歌はないけれど、ぼくが昔書いた歌にそっくりだと気がついた。よしださんの「風景」は次のように始まる。

  僕がヨボヨボのじいさんになったならば
  僕は君を連れこの街を出るんだ
  きっと待ってるさ、ふるさとの山や川が
  生まれ育ったあの土の匂い

ぼくの歌は、

  ぼくがまだ幼かった頃
  父さんはいつもかっこよかった
  日曜日にはいつも近くの公園で
  キャッチボールをしてくれたものだ

ということばで始まる。歌詞が残っているかわからないし、この最初の4行にしてもうろおぼえで正しいかどうかわからない。でも本当にメロディが似ていて驚いた。この歌はテレビ信州のIターン、Uターンを勧める番組のために書いた歌で、よしださんの「風景」の歌詞とも奇妙に一致していて面白い。もう10年以上も前のこと。その番組を偶然みたクニ河内さんが訪ねてきてくれた。そのクニさんとの再会が、ぼくが再開した音楽活動の後押しをしてくれた。

よしださんのCDを聞いて感じたことは、歌や声のよさとともに、よしださんのギターをはじめ、バックの演奏の確かさである。特に、「つらいときはもうごめんだ」の演奏は秀逸。

  耳をふさいでも、目を閉じても
  今日もどこかでくりかえす
  戦いつかれた男が歌う
  Oh, hard times come again no more

今日よしださんから連絡が入り、28日午後4時過ぎに辰野に到着とのこと。コンサートはきっと素晴らしいものになるだろう。

篠原一弘さんの「専属カメラマン」が撮った22日の飛び入りライブで歌っているぼくの写真が送られてきた。飛び入りライブではぼくはカメラマンなので、ぼくが歌っている写真は極めて少ない。だからこれは貴重な写真である。それにこんなにダイナミックな写真というのはそう撮れるものではない。弘介くん、ありがとう。


May 22, Saturday 2004

飛び入りライブデー。一番最初にオーリアッドに入ったのは「ふあさん」だったが、トップバーッターはやりずらいとのことでぼくが最初に一曲歌う。ぼくの歌は一曲でも他の人の3曲分ぐらいある歌が多い。今晩歌ったのは、その中でも one of the longest の「フィールド・オブ・ドリームズ」。そのあと「ふあさん」登場。今晩は、小ぶりのギブソン。ブルーズを歌うにはよさそうだ。1曲目は昨晩歌詞を考えたというディランの A Hard Rain's A-Gonna Fall のカバー。戦争に対する批判が随所に込められている。続いて「侮辱したのに気がつかない」「煙草路地」。



続いて原村の篠原一弘さん登場。前回は一人だったが、今晩は専属カメラマンと、カメラマンのお母さんも一緒だった。「出会い」「初恋」「東京」「抱きしめたい」の4曲。なぜか今晩はカバーが多い。「初恋」を除いては、それぞれ安全地帯、さだまさし、Mr. Children の曲とのこと。その3曲ともぼくは知らなかった。いかにぼくが日本の新しい音楽(もうそれほど新しくないのかも)に疎いかがわかる。正直なところ彼のオリジナル「初恋」が一番心に響いた。他の曲がよくなかったわけではないが。



次に、松沢美由紀さんのピアノソロ。「宿命」という曲を弾く。クラシックかと思ったら、最近のテレビドラマの曲だとか。鍵盤全部をフルに使って弾く難しい曲。終わったときは拍手喝采。続いて、芦部清志さんがステージに上り、新曲のラブソング(タイトルを聞き忘れた)と、「ストリート・チルドレン」「すこやかに」そして、芦部さんがコーチを務めるという宮田村の少年サッカーチーム「トップストーン」のテーマ曲。「トップストーン」のホームページがあるとのことだったので、Google で検索したが出てこなかった。



次に諏訪の堀内千晴さん。ロシア語で「バイカル湖のほとり」、彼の通う教会の賛美歌「心に平和を」を日本語で、そして韓国語で「故郷の春」。前回も書いたが、彼の韓国語の歌が一番聞きやすい。なぜだろう。続いて長島功さん。「転宅」「掌(てのひら)」の2曲。2曲目は初めて聞いたが、これもさだまさしの曲とか。オーリアッドのおかげでいろいろな知らない歌を聞くことができる。



最後に、「ふあさん」、篠原さん、芦部さんに2曲づつ歌ってもらう。ふあさんが歌った1曲目は、まさに小ぶりのギブソンにぴったりの曲。どこかで聞いたことがると思ったら、西岡恭蔵さんの「憧れのニューオリンズ」だった。西岡さんはオリジナル・オーリアッドへ3回歌いにきてくれた。忘れがたい人の一人である。ふあさんの2曲目は「赤色の帽子」。篠原さんはふあさんの「憧れのニューオリンズ」に触発されたのか、ファンキーでノリのいい「愛に決まってるじゃない」を1曲目に歌う。いつもの彼のしっとりした歌とは違うが、こういう歌もいい。2曲目はタイトルがまだついてない歌。最後に芦部さんが松沢さんと「東京」と「月と海」。「東京」というタイトルの歌はいろんな人が書いているようだ。芦部さんの「東京」には「アイデンティティ」や「ソルジャー」という英語が出てきて最初戸惑ったが、最近は聞きなれてきた。



最後は大工哲弘さんのCDを聞きながら、ラム酒を飲みながら歓談。ふあさんと久し振りにゆっくり話した。歌についての彼の思いを聞くことができてよかった。彼の歌のことばはどこかにひねりがきいていて面白い。それにギターと声も「ふあふあ」としていいて心地いい。ふあさんはオーリアッドでの大工さんのコンサートに来てくれることになっているが、彼が大工さんの歌に惹かれるのはわかる。大工さんの声は、声を聞くだけで人柄が全部わかってしまうような声だ。


May 21, Friday 2004

今晩中に送らなければならない(といってもすでに遅れている)校正が3つあり、オーリアッドに入ったのは9時過ぎ。5番テーブルで小野藤沢の中村さんがコーヒーを飲んでいた。1985年にオリジナル・オーリアッドがオープンしたとき、彼は毎日夕方いつもそのテーブルにいた。彼の40歳の誕生日にもそのテーブルにいたとか。そうだ、Life begins at 40. というようなことを言った記憶がある。もうあれから何年が経ったのか。Time and tide wait for no man.

明日は飛び入りライブ。原村の篠原一弘さんが来ることになっている。芦部清志さんからも今晩電話があり、歌いにきてくれるとのこと。松沢美由紀さんのピアノ独奏もあるらしい。その他、どんな人が飛び入りで歌いにきてくれるか、聞きにきてくれるか、楽しみだ。



May 20, Thursday 2004

台風の影響か強い雨。今日もスイミングへ行ったあとオーリアッドに入る。前半、セカンドウインド英語教室で教え、店に戻ると、辰野で一番大きな会社の方々が大勢きてくださって、盛り上がっていた。いくつかの締め切りのある仕事を抱えているので、後は妻に頼んで家に戻る。

家に戻る前に電話があった。トシさんのコンサートができないかとのこと。近頃何かと話題になっているようだが、ぼくとしては、マスコミの一方的な報道だけで判断したくないという気持ちがある。ただ7月まではオーリアッドでのライブがすでに予定されている。するとしても秋以降になるだろう。

閉店まぎわに、よしだよしこさんから電話があったとのこと。彼女のコンサートは来週金曜日。今日の「たつの新聞」にも広告が載ったし、いくつかの情報誌にも案内が出た。「たつの新聞」には記事にしてもらうようにもお願いしてある。コンサートまであと一週間。大勢の人たちに聞いてもらいたいものである。



May 19, Wednesday 2004

土曜日以来のオーリアッド。スイミングから戻り、少し遅れて店を開けるとすぐ、土曜日に Guild のギターで歌ってくれた藤森さんが来週金曜日(5月28日)の「よしだよしこコンサート」のチケットを2枚買いにきてくれた。徐々にチケットも売れ始めている。よしださんは女性フォークシンガーの中では最高のギタリストだと複数の人からいわれた。どんなコンサートになるか楽しみ。

しばらく、今日依頼されたマディ・ウオーターズのCDのライナーの翻訳をしていると、元県議の垣内氏が、見慣れぬ男の人と入ってくる。萱場さんというその人は、仕事の関係で今沖縄に住んでいるが、ニュージーランドの永住権をもち、クライストチャーチに家があるとのこと。しばらくニュージーランドの話でにぎわう。

萱場さんが、7月10日(土)のオーリアッドでの「大工哲弘コンサート」のチラシを見て、「大工さんがここに来るんですか」と驚いていた。やはり沖縄での大工さんの知名度は相当なものらしい。久し振りに、大工さんのCD「蓬莱行」を聞く。

何年か前にぼくの豊南の公開講座に参加してくれた箕輪町のY氏が寄ってくれた。娘さんが高2になり、英語の勉強に力を入れていて、留学も考えているとのこと。若いうちに、できたら少なくとも一年ぐらいは留学したほうがいいですよ、と持論を繰り返す。

閉店時間を少し過ぎて店を閉め外に出ると、かなり強い雨。



May 15, Saturday 2004

飛び入りライブデー。今晩は一人の新人が、まさに「飛び入り」で登場。高価なギターもさることながら、ギターワークも歌唱力もかなりのもので、新風を吹き込んでくれた。

最初に歌ったのは、まだお客さんもほとんどいない6時半ごろから、堀金村の山岸豊さん。ドロップDの変則チューニングで歌う歌はどれもしぶい山岸節。今日のギターは数日前大阪の友人から送られてきて無期限で借りることになったという1947年製の Epiphone。弦はミディアムを張ったとのこと。最初、音がちょっと硬いかなと思っていたが、耳が慣れるにつれて山岸節とぴったり合ってきた。ぼくも昔 Epiphone をもっていたことがある。なんと表現していいか、とてもファンキーな音だったことを覚えている。「Forever Young」「ゆうとときょうと」「木陰の季節」「I Shall Be Released」など。途中何曲か、前橋のLotusさんがハープでサポートに入る。いい感じだ。



次に、Lotusさん、オーリアッド2度目の登場。前回は立って歌ったが今回はすわって歌う。演奏も前回よりは静かで落ち着いていて、ぼくとしては聞きやすかった。「Still Alive」「海のかけら」、レナード・コーエンの「Hallelujah」「Bird on the  Wire」など。 「Hallelujah」は『Various Positions 』というアルバムに入っているが、残念なことにこのアルバムの対訳はぼくではない。このアルバムにはいい歌がたくさん入っている。Hallelujah のほかにも、Dance Me to the End of Love, Coming Back to You, If It Be Your Willなど。もし復刻されることがあれば、是非翻訳させてもらいたいアルバム。



次にぼくが「死は終りではない」「明日は遠く」「ガビオタの海」「千の風」を歌い、その後、赤羽真理さんが「森の小道」「旅立ちのとき」などを歌う。いつもよりキーを下げているらしく、低音が出しずらそうなところもあったが、高音がきれいに出ている。次に堀内千晴さんが韓国の歌「果樹園への道」「故郷の空」を歌う。日本の唱歌にも似たメロディのせいなのか、堀内さんの音域にあっているのか、彼が歌う外国語の歌の中では、韓国語の歌が一番安心して聞いていられる。



次に新人登場。窓際のテーブルにすわっている彼に、「歌いますか」と聞くと、手を振って歌わないというジェッシャー。するとすかさず、一緒にいたふたりの女性が、「車の中にギターがあります」という。箕輪出身で2年前から辰野に住んでいるという藤森和弘さん。1曲目は今日いとこの結婚式で歌ったという「幸せになろうよ」。声にのびがあり、ギターも聞かせる。2曲目は「東京青春朝焼け物語」。いずれも長渕剛の曲らしい。弾いているギターは Guild 。後でわかったことだが、このギターは80万円だったとのこと。その他にもたくさんギターをもっていて、一番高価なのは、マーティンのD45、180万円だったという。車一台分の値段だ。長島君の100万円のボスマンにも驚いたが、上には上がいた。



次に、ラウンド2として、山岸さんとLotusさんに歌ってもらう。山岸さんは、「子供の目から見てごらん」「It's All Over Now, Baby Blue」など3曲。Lotusさんは、「午前4時」「連れてってよ」「Stand by Me」の3曲。「連れてってよ」を聞いていて感じたことは、Lotus さんの歌のいくつかは、「プライマル・スクリーミング」なんだということ。

歌を書いたり歌ったりすることには多かれ少なかれセラピーの要素がある。ぼく自身歌を書くことで、いくつもの苦しみを乗り越えてきたように思う。「プライマル・スクリーミング」という精神療法が現在どのような評価を得ているか知らないが、その創始者のアーサー・ヤノフ自身から治療を受けたことのあるジョン・レノンの歌、特に『ジョンの魂』の中の歌は、まさに「プライマル・スクリーミング」だ。

最後に今日の出演者全員が1曲づつ歌い、終了。三浦久「宝福寺にて」、赤羽真理「人生の嵐」、山岸豊「ぼくはどこかへ大事な何かを忘れてきたような気がする」、堀内千晴「ともしび」(ロシア語)、藤森和弘「花」、Lotus 「ミスター・オービソン」。



赤羽さんが歌った「人生の嵐」は賛美歌で、赤羽さんの音域にぴたりと合い、ぼくが今まで聞いた赤羽さんの歌の中で一番よかった。それに Lotus さんの Roy Orbison に捧げた「ミスター・オービソン」も、ぼくが今までに聞いた Lotus さんの歌の中で一番よかった。

  ミスター・オービソン、その黒メガネの奥には
  ミスター・オービソン、溢れる涙、隠していたんだね



May 14, Friday 2004

午後3時半から、神田食堂で「音の抗議」反省会。参加者6名。男性5名、女性1名。ぼく以外いずれも80歳前後の方々。話が年金、年齢に及び、ぼくが「来年は60ですよ」というと、みなさん異口同音に「若い!」。若いなんていわれたのは久し振りのこと。彼らから見たらぼくはまだ洟垂れ小僧。老け込んではいられない。

ずっと以前に訳した Blues: A Musical Journey というブックレットの校正を今日中に送らなければいけなかったので、早めに失礼して、歩いてオーリアッドへ。8時までには送りたいと思っていたが、意外と時間がかかってしまった。一番悩んだのは、固有名詞の表記方法。ジェームズ、ジェームス、ジェイムズ、ジェイムスのいずれを選ぶか。エルビスなのか、エルヴィスなのか。ぼくは「ジェームズ」「エルビス」を採用したいが、すでにレコードやCDに使われている表記に合わせなければならない。「エルヴィス」にするとなると、すべての v の音は「ヴ」としたほうがいいだろう。そうすると、例えば Buckets of Rain は「バケッツ・オヴ・レイン」となる。of を「オヴ」と表記するのはぼくにはちょっと重すぎるように思われる。

校正をしながら繰り返し聞いた音楽はケイト・ウルフ。彼女の歌はいい。心に静かに滲みこんでくる。

       私は歩いていた、夢の中で
       羊のかわりに悩みを数えながら
       あの日々はどこへ行ってしまったのか
       振り向いても、もう何も見えない

       すべて過ぎていった
       そして私は今ひとり山腹にいる
       川が大分水嶺を超え
       向きを変えるところ
           from Across the Great Divide

明日は飛び入りライブデー。前橋のLotusさん、堀金村の山岸さん、辰野の赤羽さんが来てくれることになっている。他にどんな飛び入りが入るか楽しみだ。


May 13, Thursday 2004

昼頃から降り始めた雨が夜になったら本降りになった。風も強い。ジブラーンの会の方々が集まる日だったが、今回は、都合のつかない人や、風邪気味の人や、忘れてしまった人もいたみたいで、TさんKさんの2名のみ。ぼくは9時まで2階の「セカンドウインド英語教室」で教え、9時からお二人に加わった。今晩は「食べることと飲むことについて」の章を読んだとのこと。

  あなた方は、食べるために殺し、また自分の喉の渇きをいや
    すために、生まれたばかりの子牛の乳を奪い取らなければな
  らないのだから、その行為を礼拝としなさい。

  ・・・秋、ぶどう園で、ぶどう絞り器にかけるぶどう取り入
  れる時、心の中でこう言いなさい。私もまた、ぶどう園であ
  る。私のぶどうは絞り器にかけられるために集められる。そ
  して、できたてのぶどう酒のように、永遠の樽の中で保存さ
  れるだろう。

  そして冬、そのぶどう酒を汲み出す時、飲むたびに心の中で
  歌いなさい。そして、その歌の中で、秋の日と、ぶどう園と、
  ぶどう絞り器のことを思い出しなさい。

日常の雑事を離れ、オーリアッドで音楽を聞いたりおしゃべりする時間は貴重だ、
とお二人はいった。オーリアッドが少しでも心休まる空間を提供できるならばうれしいことだ。話はイラクでの人質虐待やそれに対する報復殺人にまで及び、10時過ぎに散会。

11時、店を閉めて帰るときも、雨は激しく降っていた。


May 12, Wednesday 2004

ケブ・モーのCDを聞きながら、マーク・A・ハンフリーによって書かれたブルーズに関する文章の翻訳。締め切り金曜日。下訳したものを、わかりやすい滑らかな日本語にするという、翻訳の中で一番楽しい作業。ちょっと一息入れて、ネットサーフしていると、イラクでのアメリカ人報復殺害の映像サイトのURLに出くわした。迷ったが思い切ってクリックしたら、フリーズして画面が動かなくなってしまった。何とか修復しようと悪戦苦闘しているところへ、長島君が顔を出した。

しばらくして、赤羽さんが加わり、自然と土曜日の飛び入りライブの話になった。ふたりとも、中村進さんのギターが凄かったということを誰かと話したいために寄ってくれたかのよう。その気持ちはよくわかる。共通の体験をした者同士で話すことによって、感動を追体験できる。それほどに中村さんのギターは素晴らしかった。

そこへ蕎麦処「さくら」の竹渕さんが入ってきて、今日は歌わないのかというので、1曲づつ歌うことにする。赤羽さんが「アメージング・グレース」、長島君が「療養所」、そしてぼくが「フィールド・オブ・ドリームズ」を歌う。

長島君の選曲は、お母さんが入院していることを考えると、なるほどと思わされた。今日お医者さんからお母さんの腫瘍が悪性のものではないと知らされたらしい。

閉店前に、コンピュータをチェックするとフリーズは解除されていた。しかし、今度はURLをクリックする勇気がなかった。再びフリーズするのを恐れたのではなく、その残虐なシーンを見るのを恐れたのである。報復は果てしなく繰り返されていく。人間の悲しい性としかいいようがないのだろうか。



May 8, Saturday 2004

今晩の飛び入りライブは、誰からも、出演したいという事前の連絡がなかったので、家で仕事をしていて、1時間ほど遅れてオーリアッドに入る。駐車場には一台も車が止まっていない。誰もいないかなと思いながら中に入ると、カウンターに2人の外国人がすわっている。一人は御柱のときわが家にきたイギリス人のニックだ。その横にすわっている若い男には見覚えがない。ニックの友だちで伊那に住むダン・スターリングというアメリカ人だった。流れていた音楽はミシシッピー・ジョン・ハート。彼がリクエストしたらしい。彼はセントルイス出身でブルーズが好きで、自分でも歌うという。あまり人前で歌ったことがないとのことだったので、まずみんなが来る前にちょっと練習してみたらといって、歌ってもらう。1曲目は、ミシシッピー・ジョン・ハートの「ルイス・コリンズ」で、2曲目は、ぼくがディランが好きと聞いて、「タングルド・アップ・イン・ブルー」を。この長い歌を全部歌詞を見ないで歌ったのには驚いた。 

まだ客席が閑散としているうちに、ぼくが、「明日は遠く」と「死は終りではない」を日本語と英語で、そして最後に「アルバカーキの空は今日も(DU)」を日本語で歌う。ダンは伊那北高校のALTですでに3年ほど日本にいて、日本語をよく理解する。3曲目を歌う前に、「言葉をよく聞いてほしい。ダン、1991年に何歳だった?」と聞くと13歳だったとのこと。そして「湾岸戦争の歌か?」という。勘がいい。

次に、ゴールデンウイーク中にCDのレコーディングを行ったという芦部清志さんが、ピアノの松沢美由紀さんのサポートで、「ひまわり」「すこやかに」「ストリート・チルドレン」「月と海」を歌う。最初の2曲は松沢さんのピアノ伴奏のみで歌う。次にダンが登場して2曲歌う。1曲目は彼のオリジナルで、タイトルはわからなかったが、彼が気に入っていた伊那の「たまねぎ」というレストランのオーナーが数年前に亡くなったときに書いたものらしい。2曲目はジョン・ハートの「ルイス・コリンズ」。これも死と関係する歌。彼が「アルバカーキの空は今日も」をどう思ったか聞きたかったが、ケイタイに連絡が入り、堀内さんの歌が終わったところで、松本へ出かけて行き、聞けなかった。ダンは、凄く上手いというわけではないが、「味のある」歌い方である。また歌いにきてほしいものだ。堀内さんは、得意の英語で自己紹介をしたあと、いつものように、韓国語、フランス語、ロシア語、ドイツ語で歌う。

  

次に、ボブ鈴木登場。彼は独特の歌い方、まさにボブ鈴木節としかいいようのない歌い方で4曲、「五月の雨」「君のことぼくのこと」「ツイストで踊りあかそう」「ドック・オブ・ザ・ベイ」を歌う。どんな歌をカバーしても、オリジナルにしてしまう。その後、ボブが連れてきてくれた山梨県高根町の中村進さん登場。1曲目から度肝を抜く見事な演奏と歌。ギターの音色が素晴らしい。彼はオリジナル曲、「カントリ・ブルー」「チークダンスを踊ろう」「犬」、それに「セントルイスの彼がいたらよかったのに」といいながらブルーズ「天国行きの汽車」を歌う。2曲目と3曲目はダブルDチューニングとかで、1弦とと6弦のEをDに下げて演奏する。これはディランが昔若い頃よく使ったチューニングらしい。


  

次に遅れてきた長島功君と赤羽真理さんに歌ってもらう。長島君は現在お母さんが入院中とのことで、オーリアッドで歌を聞いたり歌ったりしているひと時が唯一心休まるときだというMCのあと、「君を忘れない」と「無縁坂」を。赤羽さんは「陽のあたるところへ」と「旅立ちのとき」を歌う。

  

出足が遅く、歌い始めたのが遅かったので、この段階で11時近くになっていた。最後に、芦部、鈴木、中村の3氏に1曲ずつ、これだけは歌っておきたいという歌を歌ってもらった。芦部さんは、「街道(みち)の傍らで」を、ボブ鈴木は「行けることろまで」を歌った。この2曲はぼくが大好きな歌で、ありがたい、ぼくの好みに合わせてくれたのだ。中村さんは今度のCDに入れるつもりという新曲「夜明け前」を歌う。

  

その後しばらく、どくだみ茶と梨のブランディを飲みながら歓談。ギター好きの集まりである。今夜初登場で見事なギターを弾いた中村進さんのまわりに自然人垣ができ、ギター談義に花が咲く。中村さんはログハウスを建てる大工さんで、自分でギターまで作ってしまうとか。ギターを作るだけあって、とにかくギターに詳しい。世の中には凄い人がいる者だ。最近しみじみ思う。職人的な技術を身につけている人は輝いている。是非また歌いにきてほしいものだ。


May 7, Friday 2004

かなり早い時間に大月さんがきてくれた。先日の茶木さんのコンサートのときは、急遽大月さんにキャノンのケーブルを借りることができて大いに助かった。彼は家にコンクリートの防音壁で囲まれたスタジオを持っているとのことで、オーディオ機材にも詳しい。前からオーリアッドの古いカセットデッキのかわりにMDプレーヤーを取り付けて録音できるようにしたいと思っていたが、彼に見てもらったら、簡単にできるとのこと。明日の飛び入りライブには間に合わないかもしれないが、よしだよしこさんのコンサートまでには何とか間に合わせたい。

カウンターで大月さんと話しているところへ、蕎麦処「さくら」の竹渕さんが背の高い一見してミュージシャンとわかる人と入ってきた。「さくら」でよく演奏するジャズマンかなと思っていると、高遠に住む前澤勝典さんとのこと。彼の話を総合すると、彼は奥さんと二人で、「亀工房」という名のハンマー・ダルシマーとギターのユニットをつくり、アイリッシュ・ミュージックを演奏しているとのこと。音楽だけで生計を立てているプロのミュージシャンで、日本各地で、時にはアメリカでも、演奏しているようである。生まれて育ったところは東京だが、自然があるところに住みたいと、先ず山梨県の清里に、そして数年前高遠に移り住んだらしい(高遠というと高遠城跡と高遠饅頭の店が並ぶ中心街が目に浮かぶが、白山トンネルを抜けて長谷村へ至る道や杖突峠へ至る道は実に自然豊かである)。

ギターを弾いてもらった。ぼくのギターでは弾きづらそうだったが、実に見事な演奏。まるで呼吸をするかのように自然に、左手の5本の指がネックの上を滑る。右手の5本の指も軽やかに(ぼくから見ればアクロバティックに)6本の弦を爪弾く。ギターを弾くというのはこういうことをいうのだなと実感させてくれる演奏。大月さんにも、すでにかなり酔っていたが、ピアノを弾いてもらう。1曲目は前にも聞いたことがあるが、名前を忘れてしまった曲。2曲目はいつもの「パッヘルベルのカノン」。二人の「ミュージシャン」の後では少し気後れしたが、ぼくも自己紹介がてら「アルバカーキの空はいつも」を歌う。さらに竹渕さんのリクエストで「碌山」を。風邪はほとんど治っていたが、「碌山」の途中で咳き込んでしまい散々な演奏。

前澤さんは6月20日(日)にかんてんぱぱホールで行われる「アイリッシュ・ミュージック・コンサート」のチラシを置いていった。

   「アイリッシュ・ミュージック・コンサート」
   
   6月20日(日)午後3時30分〜5時30分
   出演:亀工房(前澤勝典&朱美)
   料金:前売り2000円
、当日2500円(小中高生1000円)
   予約・問合せ:kamekobo@helen.ocn.ne.jp

家に帰り、彼らのホームページ(http://www7.ocn.ne.jp/~kamekobo/)にアクセスして、すごい人たちだと知った。3月には東京の草月ホールで、一時ディランのバックでバイオリンを弾いていたスカーレット・リベラと競演しているのだ。彼のCDのなかから3曲、そろぞれ30秒ほど試聴できるが、2台の楽器とは思えぬ重厚なサウンド。


May 6, Thursday 2004

セカンドウインド英語教室を終えて下におりてきたら、ちょうどソニーのK氏から電話。今日締め切りの訳が届いたという礼と、来週金曜14日締め切りの別の翻訳の依頼。K氏はしきりに恐縮していたが、ぼくとしてはありがたい限り。これもブルーズに関するもの。

身体の調子は大分よくなったが、まだ咳が少し残っている。微熱もありそうだ。大事をとって、今晩は早退して、あとは妻に頼むことにした。上の教室から降りてきたとき彼女が聞いていた音楽はミシシッピー・ジョン・ハート。今、わが家もオーリアッドも、ブルーズにあふれている。ジョン・ハートに関しては、60年代カリフォルニアに住んでいるときから大好きだった。彼の柔らかい暖かい声、それにフィンガーピッキングの見事なギター。何度も彼のように歌いたいと思ったものだ。

先週の飛び入りライブの日に奥さんと来てくれた高橋君から、オーリアッドで食べたコシアブラの天ぷらがとても美味しかったというメールが入った。翌日、諏訪のスーパーで見つけたワンパック700円のコシアブラを買い、お母さんに天ぷらにしてもらったとか。奥さんのお姉さんが有馬に畑をもっていて、その近くには山もあるので、コシアブラがあるか「調査を命じた」と書いてあった。信州でもそろそろ終りだから、関西では、あったとしても、かなり大きな葉っぱになっていて食用にはむかないのではないだろうか。

5月28日(金)のよしだよしこさんのコンサートのチラシとチケットを作って、オーリアッドに置いた。お客さんが何人入ってくれるか心配だが、ギターの名手とのこと、楽しみだ。ご協力のほどよろしくお願いします。


May 5, Wednesday 2004

子供の日。あいにくの雨。久々のオーリアッド。少々体調が悪く、店を開けるのを妻に頼み、遅れてオーリアッドに行く。垣内彰さんが、ベンチ式の椅子の金具を締めていてくれた。前から気になっていた。ライブ中にギシギシと、お祭りの長持ちのような音がする。垣内さんは、先日の茶木さんのコンサートのときに気になったとのことで、早速締めに来てくれたのだ。ありがたい。彼は機械の設計を本職とするが、自宅のウッドデッキを作ってしまうほどに木工の技術ももっている。

オーリアッドに入ると、感じのいい音楽が流れていた。ケブ・モーだ。妻はディランはあまり好きではないが、エリック・クラプトンは大のお気に入り。彼女がケブ・モーをかけていたのは、クラプトンとかなりの共通点があるからだろう。ひょっとしたら、たまたま、ケブ・モーのCDがプレーヤーの中に入っていただけかもしれない。ケブ・モーの Keep It Simple は今ぼくが一番よく聞いているアルバム。ブルーズというジャンルを超えた新しいポピュラー音楽のような気がする。ブルーズ、ジャズ、カントリー、ポップス、フォーク、すべての要素が含まれている。

大月さんと友人たちがきてくれた。大月さんのバンド「香月!」は6月5日(土)の飛び入りライブの日に、オーリアッドでの3回目のギグをすることになった。多くの人に聞いてもらいたいバンドである。今回も入場無料の飛び入りライブだが、そろそろ彼らは有料のコンサートをしてもいいのではないかなと思う。


May 1, Saturday 2004

高校時代の同級生、高橋尚が連休で神戸から諏訪に帰省し、奥さんと愛犬と一緒に母の遺影に線香を上げに来てくれた。震災後神戸に彼を訪ねて以来だから、久し振りだ。会わなかった間の年輪が互いの身体に刻まれている。しかし、しばらくしたら気分は高校生。「長野ジャーナル」のエッセイにも書いたことがあるが、高校に入ったとき、クラスでギターをもっていた者は、小松光雄、赤羽好和、高橋尚とぼくの4人。ぼく以外はみんなコードを弾いて歌うことができた。文化祭でバンドを組んで歌おうということになった。フルートを吹いた大宮修も加えて、Red River Valley や Green Fields などを歌った。ギターが弾けないぼくは、後ろのほうで弾く振りをしていた。不思議なことに、一番下手くそだったぼくがこの歳になってもギターを弾いて歌っている。大学時代には高橋はPPMの歌をレコードと同じように弾くことができた。彼が弾く Very Last Day の出だしのジャン・ジャ・ジャ・ジャ・ジャ〜ンという音が今でも聞こえてくるようだ。

今日の飛び入りライブは連休中のせいか、あるいは茶木さんのコンサートの翌日のせいか、いつもより歌う人も聞く人も少なかったが、面白い夜になった。高橋君に何か歌うように頼んだが、最近は弾いていないとのことで、一緒に「風に吹かれて」を歌った。この歌は彼の結婚披露宴で一緒に歌った歌。この次にくるときは、是非弾き語りで歌ってもらいたいものだ。次に堀内さんがいつものように韓国語で「果樹園への道」を歌った。長い間、神戸の会社の貿易部門にいた高橋君は世界中の国々を訪問してきた。そこで、堀内さんにさらにロシヤ語、フランス語、ドイツ語の歌も歌ってもらった。

長い休暇には東京から帰省しオーリアッドに顔を出してくれる福井さんがお見えになっていたので、何か歌ってもらえないかと頼む。最初は固辞されていたが、「私は歌えないので」といいながステージへいき、やおら何か語りだした。見事な声色。忠臣蔵の「お軽と勘平」道行きの一節。こんな特技があるとは知らなかった。拍手喝采。

  

次に、安藤則男さんがフランス、プロバンス地方の歌だという「遥かなる地の恋人よ」、それに「オー、シスター」「おれがちびすけだったころ」などを歌い、いよいよ今日のメイン、歌う精神科医ふあさん登場。今回彼はたくさん歌ったが、ぼくが一番感心したのは、最初に彼ひとりの弾き語りで歌った「島」。その歌は次のようなことばで始まる。

  島といっただけでふいに浮かんできて
  ビルの窓がかげるようなひとつの島がありました
  島といっただけでこの世のどこかに
  ひっそりとなにかがあるようなひとつの島がありました

菅原克己の詩にふあさんが曲をつけたものらしい。ふあさんの素朴なギターと暖かいやわらかい声が詩にマッチして「霊的な」領域に接する雰囲気がかもし出され、眼前にひとつの島が浮かび上がった。気がついてみると、心が静まっていた。ことばの力、歌の力を感じた。そのあと、安藤さん、それにベースの伊藤さんも加わり、ふあさんは「ぐあ」「コリーナ・コリーナ」「おまえのことしか歌えない」などを歌った。最後には遅れてきたパーカッションの中馬さんも加わり、ケサランパサラン雑技団が勢揃い。勢いのある演奏が繰り広げられた。

  

ふあさんのあと、もう一度福井さんにお願いして「お軽と勘平」道行の一節をお願いした。遅れてきて聞いていない人も何人かいたので。またもや拍手喝采。次に小野の中村さんにギターを演奏するように頼むが、昼間大きな木を切り倒し、手が震えていてギターは弾けないとのことで、ギター演奏ではなく、安藤さんのギターの伴奏で藤村の「千曲川旅情の歌」を詠唱した。

  小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ
  緑なす萋は萌えず 若草も藉くによしなし
  しろがねの衾の岡辺 日に溶けて淡雪流る

  あたたかき光はあれど 野に満つる香も知らず
  浅くのみ春は霞みて 麦の色はつかに青し
  旅人の群れはいくつか 畠中の道を急ぎぬ

中村さんが、全編暗記していることに驚いた。そのほか、牧水の和歌などを朗詠した。いい雰囲気だった。

  

そのあと、安藤さんにリードをお願いして、ぼくが「ガビオタの海」を歌う。さらに伊藤さんのベース、中馬さんのパーカッションも加わり、「碌山」「アルバカーキの空は今日も」を歌う。最後に伊藤さんにベースのソロをお願いした。面白い飛び入りライブだった。

  

最後、千葉の齋藤さんから贈られた梨のブランデーをいただきながらしばし歓談。ふあさんが歌った「おまえのことしか歌えない」は若干ことばやメロディーが違っていたので、正調「おまえのことしか歌えない」を聞いてもらう。ところが長い間歌ったことがなかったので、ふあさんのノートを見なければ歌詞が思い出せなかったし、コードもなかなか思い出せなかった。久々に歌ってみると悪い歌ではない。また歌ってみよう。

  あの異人の美人を連れた奇人は詩人だろう
  暗い街角に立ち、雨模様の空を見つめながら
  ことばを探している
  俺はおまえのことしか歌わない
  おまえのことしか歌えない
  おまえの後姿が闇の中に、浮かんで消える

20代の中ごろ書いた歌。3枚目のLP『ポジティブリー寺町通り』に収められている。