OREAD Diary August 1〜August 31, 2004
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August 30, Monday 2004
よしだよしこさんと村上律さんが、飯田でのライブの帰りとのことで寄ってくれた。よしださんにお会いするのは、5月にオーリアッドで歌ってもらって以来2度目。村上さんの名前は昔からよく耳にしていたが、お会いするのは初めて。
木陰にすわり、いろんな話を聞いた。村上さんは、「律とイサト」「アーリー・タイムズ・ストリングズ・バンド」それに「ラスト・ショウ」などのバンドでバンジョーやギターを弾いてきたが、自分でも歌いたくなって「ロホホラ」というアルバムを最近出したとのこと。今各地に歌いにいっているらしい。是非一曲聞かせてほしいとお願いする。「ダンラン」と「自転車に乗って」を歌ってくれた。「自転車に乗って」は懐かしく、思わず口から「じてーんしゃーにのーって〜」と出てきた。よしださんも歌っている。昨夜の飯田でのライブでも、この歌の大合唱になったとのこと。
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そのうちによしださんが車に戻り、何やらきれいな布に包まれたものを抱えてきた。ダルシマーだった。彼女はそれを膝にのせ、軽やかに弾き始めた。そして歌い始めた。美しいメロディ、美しい声。ゲーリック語の歌に彼女がことばをつけたものとか。彼女の雰囲気にも声にもダルシマーがよく似合う。
村上さんもよしださんも軽々と弾いている。簡単そうに見える。本当は難しいんだろうな。ちょっとバンジョーに触らせてもらった。サンタローザのモンゴメリー高校に通っていたころ、友人のトム・ピクストンがバンジョーを弾いていた。バンジョーがほしいとその頃はよく思っていたものだ。Mongomery High School Class of 1964 40th Year Reunion に参加するため、9月の終わりにサンタローザへ行く予定。楽器屋を覗いてみようかな。
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日程はまだ定かではないが、村上律さんがオーリアッドに歌いにきてくれることになった。
August 29, Sunday 2004
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LSEC (Lake Suwa English Club)へ行ってきた。年配の方々が多いが、みな熱心に勉強するので感心している。今月の宿題のひとつは、次の文を正しい音とリズムで暗記すること。
I have a dream that one day on the red hills of Georgia the sons of former slaves and the sons of former slave-owners will be able to sit down together at the table of brotherhood.
今夜歌った歌は、前回から練習を始めたレナード・コーエンの「スザンヌ」。一度歌ったあと、Songs from the Life of Leonard Cohen というビデオの中でコーエンが実際に「スザンヌ」を歌っている映像を見る。今夜は、土曜の飛び入りライブの常連、堀内夫妻もクラスに現れたので驚いた。
8月中は毎晩8時40分から諏訪湖で花火が上がるということで、授業を早く切り上げて花火を見に行く。昨年も行ったことを思い出した。月一度のレッスンだが、今年の11月でもう2年になるとのこと。早いものだ。
August 28, Saturday 2004
「そーたライブ」大いに盛り上がった。前半はそーたくん一人で、自作のイラストを駆使した紙芝居風演出を交え、ほのぼのとした語りと歌(「うさぎ」「あくび」「とんぼの空」など)を聞かせた。休憩を挟んだ後半は、バンド「べジタブルズ」とコーラス・デュオ「もらべりあ」をバックに、「イチゴ一笑(イチゴイチエ)」「まる」などを熱唱。盛り上がった後半は、始まったらすぐに終わってしまた感があった。ステージを下りても拍手が鳴り止まず、再度登場。さらに2曲歌う。
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このライブはそーたくんが今年の春まで勤めていた会社OFKとその社員のみなさんに感謝の気持ちを伝えたいと企画されたもの。会社関係の方々や、彼の音楽仲間が、遠くは大阪や三重から、たくさん集まった。そーたくんの人柄を偲ばせる。
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ライブ終了後も多くの人たちが残り、そーたくんを囲んで話がはずむ。そのうち、いつもの飛び入りライブ状態に。トップバッターは、そーたくんの友人でもあり、以前に一度オーリアッドで歌ったことのある弦巻吉春さん。独特の風貌、独特の歌。「ダンボールハウス」「手すりのついた鯨の歌」など。次に、常連、堀内さん、ロシア語で「ともしび」、韓国語で「故郷の春」など。
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今夜、WISHは、松沢さんのピアノ伴奏だけで、芦部さんが「林檎」と「すこやかに」を歌う。いつ聞いても、芦部さんは歌がうまい。「すこやかに」をピアノ伴奏だけで聞くのは初めて。9月中旬のNHK長野局の番組でこの歌をピアノの伴奏で歌うために練習中とか。
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次に、今夜のバックバンド、ベジタブルズの二人を含むバンド「松本深夜」(山永、森、森本)プラスOne(ベジタブルズのパーカッショニスト)が登場。「それでいて」「写真家」など3曲歌う。松本深夜は元信大生たちのバンドで、現在はメンバーが離れ離れになってしまい練習もままならないとのことだが、見事な演奏。歌の内容も歌い方もいい。
でっかい世界にアタマ飛ばして、帰ってこないあいつ
ちいさなことにココロ奪われ、すりへってゆくあいつ
どっちもどっち笑ってみては、こっちもかもと青ざめて
そんな夜更けに聞こえてくるのは、やさしい唄であってほしい
「それでいて」より
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最後に、遅れてきた藤森和弘さんが、敬愛する長渕剛の歌を、誰もいなくなったがらんとした空間で3曲歌う。「とんぼ」はこの前彼が歌ったときにぼくがリクエストしたものだとか。まだ子供たちが小さかった頃、この歌が主題歌だったテレビドラマを一緒に見たものだ。「Stay Dream」と「花菱にて」は初めて聞いた。藤森さんに「桜島へ行きましたか」と聞いたら、「家のペンキを塗っていました」という返事が返ってきた。
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August 27, Friday 2004
午後遅く裏山に上り、写真を撮りながら歩いたり走ったり。5時半頃家に戻り、オーリアッドへ行く前にメールをチェックしようとコンピュータの前にすわったら、そのまま眠ってしまった。目覚めて時計を見たら6時13分。しまった!あわててオーリアッドに駆けつけたが、30分以上遅れて開店。
今夜は、ぼくの愛聴盤のひとつ、Singer-Songwriters of '70s (Rhino Records, R2 71843 OPCD-1660) を繰り返し聞いた。全18曲の中に、Steve Goodman-City of New Orleans, Nitty Gritty Dirt Band-Mr. Bojangles, John Prine-Angel from Montgomery, Arlo Guthrie-Hobo's Lullaby, Kate Wolf-The Lilac and the Apple, Townes van Zandt- Poncho & Lefy が含まれている。
遅くきた初めてのお客さん二人に「トシ・コンサート」のチラシを渡す。「ここであのトシが歌うんですか」と驚いた様子。
よしだよしこさんから電話があった。今度の日曜日、飯田市の「ふぉの」というライブハウスで歌うとのこと。村上律さんとの共演。午後7時30分開演。予約3000円、当日3500円。「ふぉの」の電話番号は、0265-52-6459。興味のある方は是非お出かけ下さい。
オーリアッドは、明日は「そーたライブ」がある。開演6時半。当日券1200円。盛況が予想される。9時ごろからは通常の飛び入りライブになる予定。
August 26, Thursday 2004
オーリアッド開店前に、OREADという看板の文字が見えなくなるほどに生い茂っている柊の木の枝をチェーンソーでいくつか切り落とした。すっきりした。
店は暇だったが、遅くなって母の主治医だった Dr. Tsuchiya 来訪。ジャックの水割りを飲みながら語る。今晩の話題はハイデッガー&道元から、DNA、利己的遺伝子まで。昔、『存在と時間』を読み始めたがまったく歯が立たず、断念したことがある。40年以上も前のこと。だからハイデッガーについて語るドクターに合いの手が入れられない。また読み直してみようかな。
道元について話しているとき、ドクターは、道元のお母さん伊子(いし)は、木曽義仲の妻だったが、義仲死後、内大臣久我通親の側室となり、道元を生んだといった。知らなかった。お母さんは当時の京都でも名高い絶世の美女だったが、道元が8歳のときに亡くなったらしい。戦乱の世に翻弄され若くして亡くなった母親の運命が、おそらく道元のその後の生涯に大きな影響を与えたに違いない。
いつもより遅く帰宅。
August 25, Wednesday 2004
先週土曜日以来のオーリアッド。今夜は「ジブラーンの会」の方々が6名きて、勉強会を開いた。今晩は「家について」と「衣服について」の2章を読んだようである。このふたつの章のいわんとすることはかなり似ている。家も衣服も束縛でありえるということ。
家の中にあるものは一体何か。戸締りをして守らなけれ
ばいけないものは一体何か。そこには平和が、あなたの
真の強さを表す静かな心が、あるだろうか。・・・ある
のは安逸だけではないだろうか。あるいは、客として家
に入り、それから執事になり、最後には主人になってし
まう泥棒のような、安逸を求める欲望だけではないだろ
うか。―「家について」より
あなた方の織る服は、人間の美しさの多くを包み隠して
しまうが、醜さを覆い隠しはしない。他人の視線を気に
しなくてもいいという気安さを衣服に求めても、結局は
自分の身を束縛する首枷や鎖を見出すことになる。―
「衣服について」より
ヘンリー・デイヴィッド・ソローが『森の生活』の中で、家というのは棺桶だ、といっていたのを思い出す。ジブラーンは棺桶どころか、墓に喩えているところがある―「死んだ者によって、生きている者のために作られた墓の中に住んではいけない」。
もちろん、家も衣服も必要であるが、できるだけそれから自由でいたいものだ。60年代のカリフォルニアで出会った人たちがソローやジブラーン愛読した気持ちがよくわかる。
60年代のカリフォルニアといえば、8月7日の飛び入りライブで歌った京都の田中郁夫さんから、『追憶の60年代カリフォルニア』を読んだ長い感想が送られてきた。本というものは、出版された瞬間、作者から離れ、どのように読まれようと読者の自由であるという側面がある。しかし、田中さんは作者の意図を、ひょっとしたら作者以上に、理解して下さったような気がする。手紙の最後は次にようなことばで終わっていた。
最後の方で、テイヨーさんが "Fuck you, Hisashi! Go back
to Japan"と叫んだところでは、不覚にも涙が出てしまいまし
た。単なる昔語りではなく、切ないながらも多くの示唆と含
蓄に富むこの本を読み終えて、私も一言叫びたくなりました。
"Fuck you, Hisashi! こんな本書きやがって!" またお会い
できる日を楽しみにしています。
田中さん、ありがとうございました。また歌いにきて下さい。
August 21, Saturday 2004
今晩は、香月!とWISHがメインフィーチャーの飛び入りライブだった。どんなライブになるか興味があったが、「対バン」の定義がどうであれ、いい化学反応がおきたようだ。今までにオーリアッドで、香月!もWISHも何度も演奏をしているが、同じ日に演奏したことは初めて。
WISHが演奏を始める前に、安藤則男さんが「ほっぺた」「夫の舌はにがい」を含む5曲、堀内千晴さんが韓国の歌を2曲(「故郷の春」他)、赤羽孝昌さんが「あざみの歌」、そして三浦久が「千の風」を歌う。
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8時過ぎ、WISHの演奏が始まる。「東京」「蝉時雨」「月と海」「すこやかに」「Street Children」、そして最後に新曲「風のイニシャライズ」を歌う。いつもより意欲的で、やや緊張気味。それが結果としては、説得力ある演奏につながった。今回初めて「蝉時雨」のことばをじっくり聞いたが、芦部さんの他の曲に共通するノスタルジックな情景を彷彿させる佳曲。「すこやかに」はいつ聞いてもいい。
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8時50分ごろ、香月!が歌いはじめる。最初のほうで、PAの不調があってご迷惑をかけたが、彼らの演奏も、いつにもなく、意欲的で、香さんのボーカルが力強い。「ストローベリー・ナイト」「だるまさんがころんだ」「タンポポと青空」「24・7」「X-微熱の街」「しろうさぎなまいにち」を歌う。そして、アンコールに「Ann〜ラストソング」。この歌はいつ聞いてもいい。イガラン作曲の「24・7」というのは24時間一週間毎日あなたに会いたい、という意味とか。Eight Days a Week に共通する気持ちか。大月さんのピアニカの伴奏も楽しめた。
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30分ほどの休憩のあと、香月!に再度歌ってもらう。彼らの歌を聞きたい人たちが何人か、演奏が終わったあとかけつけてくれたので。このとき歌った「誕生-ブランディ・エッグノッグ」はメロディといい歌詞といい素晴らしい。大月さん作曲、香さん作詞。
たくさんの小さな偶然、変えられぬ歴史の必然
幾千億の物語の果てに君が生まれ、僕が生まれた
毎日の小さな選択、運命の大きな決断
幾千筋の交差する糸に導かれて、ここで出逢った
どれかひとつが違っても、きっと出逢えなかったから
同じ星に生まれた不思議
出逢えて、ありがとう
次に安藤さんが、大月さんとセッションしたいと名乗り出て、Knocking on Heaven's Door と「北国の少女」。安藤さんにはディランが似合う。その後、松沢美由紀さんの希望で、大月さんと連弾。大もての大月さん。照れている顔が「かわいらしい」。
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次に赤羽真理さんが久々登場。傑作「千両梨の実」を歌う。いい歌だ。最後にWISH再登場。「林檎」を歌う。梨と林檎。どちらもいい。
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August 20, Friday 2004
子供のころから、お盆が過ぎれば涼しくなるということばをよく耳にした。今日は日中はとても暑かったが、夕方から涼しくなった。南側の窓をひとつ開けたら風が入り、クーラーをつける必要がないほど。
涼しくなったのに今晩はなぜかビーチ・ボーイズの歌が聞きたくなった。ぼくのお気に入りは、「サーファー・ガール」。
かわいいサーファー、かわいこちゃん
ぼくの心はもうメロメロ
ぼくを愛してくれる? ねえ、サーファー・ガール
サーファー・ガール、ぼくのかわいいサーファー・ガール
Little surfer, little one
You made my heart all undone
Do you love me, do you, surfer girl
Sufer girl, my little surfer girl
63年夏、サンタローザの高校に編入したとき、よくラジオで流れていたのが、「サーフィング・USA」。ビートルズ旋風が巻き起こる前のこと。ぼくはリバイバルしたアメリカン・フォークミュージックに興味をもち、どちらかというとビーチボーイズの音楽は軽視していた。あれから40年。今でもときどき彼らの音楽を聞きたくなる。そして、それが少しも色あせていないことに驚く。
「香月!」の大月さんと栗林さんが立ち寄ってくれた。明日の飛び入りライブは「香月!」と芦部&松沢ユニットの「WISH」がメイン・フィーチャー。どんな競演が繰り広げられるか楽しみ。
「トシ・コンサート」のチラシとチケットができました。興味のある方はお早めにお求め下さい。
August 19, Thursday 2004
2日前に宮田村のIさんより連絡があり、トシさんが19日に、つまり今日、辰野のいくつかの老人介護施設を慰問して歌うという連絡があった。半信半疑だったが、今日12時少し前に彼女から再度電話があり、「ぬくもりの里」にいるという。午後の予定は1時半から福寿園で歌うとのこと。Iさんは、トシさんのコンサートをオーリアッドできないかと最初にコンタクトしてきた人。
1時過ぎ、オーリアッドでトシさん、マネジャーさん、それにIさんに会った。以前のイメージとは違い、トシさんは普通の格好をした普通の人だった。プロフィールによれば、彼は1965年千葉県生まれ。1997年にX-JAPANを離れたあと、ソロの弾き語りで全国各地を回り歌ってきた。今、彼の活動はさまざまな波紋を引き起こしている。その真偽のほどはわからない。しかし、風聞だけで判断するのではなく、彼の歌と話を直接聞いて判断する必要があるのではないか。ディランもいっているように、
You're right from your side
I'm right from mine
あなたはあなたの側から正しく
ぼくはぼくの側から正しい
のだから。
ほとんど時間がなかったが、ギターを弾いて、ちょっと歌ってもらった。昔よく耳にしたあの高音のボーカルは健在だった。オーリアッドでの彼のコンサートは9月18日(土)午後7時より。ヒーラーやプリーチャーとしてではなく、シンガーとしての「トシ」を聞きたいものだ。
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ここ数年増加している死因で、お盆直前に親友を亡くしたという人が、昨夜に引き続きやってきた。彼は親友に対して何もしてやれなかったことを悔やみ、極度に落ち込んでいる。彼を慰めることばが見つからない。ぼくができることは、ただ彼の話をきいてやることだけ。
今夜彼は親友が好きだったという村下孝蔵のCDをもってきた。一緒にそのCDを聞いた。聞いたことのない歌ばかりだったが、一曲だけ聞いたことがあった。「初恋」という歌。いい歌、いいメロディだ。
好きだよと言えずに初恋は
ふりこ細工の心
放課後の校庭を走る君がいた
遠くで僕はいつでも君を探していた
August 18, Wednesday 2004
久しぶりのオーリアッド。先ず、ケトルに水を入れ、コンロにかけ、表のCLOSED のサインを OPEN に変える。再び中に入り、水差しに氷を入れ、水を入れようとしているところへ、誰かが入ってくる気配。
7月の終わりに、横浜の実家へ帰る途中に寄ってくれた藤江さんだ。道中で聞くようにと、そのとき貸せてあげたブルーズのCDを返しにきてくれたのだ。それに、スプリングスティーンのブートレッグをコンパイルしたCD-Rを持ってきてくれた。ぼくが「ファクトリー」や「マンション・オン・ザ・ヒル」が好きだといったのを覚えていてくれたのだ。
そのCD-Rには、1997年1月31日、東京国際フォーラムでの「トム・ジョード・ツアー」の最終日、「ガルヴェストン・ベイ」を歌う前、スプリングスティーンがこの歌をぼくに捧げてくれたときの様子も収められていた。驚いた。おそらくボスのファンにとっては常識なのだろうが、ぼくはこのときのブートレッグが存在していることを知らなかった。
2度目のアンコールに登場し、「ノー・サレンダー」を歌ったあと、
アー、コノ、コノウタハ、ワタシノウタヲ、ヤクシタ、
ヒサシミウラサンニ、オクリマス。
と、たどたどしい日本語でいった。
7年半ぶりに、あのときの情景が浮かんできた。胸のポケットから取り出した一枚の紙を見ながら、彼は上記のようにいったのだ。そのときの彼のしぐさや表情がありありと思い出される。そして、彼がそのことばをいったときの会場のどよめきも聞こえてくるようだ。世界のスーパースターから歌を捧げられたときの照れくさくも晴れがましい気持ちや、昨年秋亡くなった福田一郎さんが、ぼくのほうを向き、目配せしてくれたことなども思い出される。
あのときからもう7年半が経ってしまった。時代は20世紀から21世紀に入り、世界はますます混迷の度合いを深めている。その原因はいくつもあり、複雑に込み入っている。しかし、アメリカが、ブッシュ政権が、その大きな原因のひとつであることは疑いの余地がない。
10月の初め、スプリングスティーンをはじめ、多くのミュージシャンが Vote for Change というアメリカ各地で開かれるコンサートに出演する。ぼくが覚えている限り、アメリカ大統領選挙で、これほど大規模なコンサートが開かれたことはない。しかも、特定の候補を応援するためではなく、特定の候補の当選を阻止するために。
ぼくが今までに書いてきた歌、そして過去25年間ステージ
で歌ってきた歌の内容を考えたら、今回の選挙に何もいわ
ないということは許されないと感じたんだ。
政治的な立場を明確にすることはアーティストにとっては危険を伴う。それでもなお、あえてこのように発言し、コンサート参加を決めたスプリングスティーンのこのことばは信用していいだろう。
スプリングスティーンが東京国際フォーラムでのコンサートの最終日に、それまで一度も歌わなかった「ガルヴェストン・ベイ」を歌った経緯は次のボタンから。
August 17, Tuesday 2004
新盆のため13日14日はお休み。お盆の期間中、思いがけない訪問者もいたりして、忙しかったが、記憶に残るお盆だった。ただ、昨日、今日と、疲れてしまい、ただぼっとテレビを見たり、うたた寝したりして無為に過ごす。
かろうじて、午後遅く、締め切りを一日オーバーしていた「ロバート・ジョンソン:キング・オブ・デルタ・ブルース・シンガーズ」のvol.1と vol.2 のライナーの校正を済ませる。
明日から通常営業。今年後半のオーリアッドが始まる。どんな出会いが待っているか。
August 12, Thursday 2004
昨日の日記に「そーたライブ」8月21日(土)と書いてしまった。そのことを今晩大月さんに指摘され、早速修正した。8月21日(土)は大月さん率いる「香月!」と「WISH」をフィーチャーした飛び入りライブ。「そーたライブ」は8月28日(土)。お間違えなきよう。
そーたさんがポスターをもって打ち合わせにやってきた。そーたさん一人の弾き語りかなと思っていたら、パーカッション、ベース、それに女性コーラス2人の「ベジタブルズ&もらべりあ」というバンドがバックに入るとのこと。面白そうだ。そのライブのポスターは、彼のホームページで見ることができます。次のボタンをクリックしてみて下さい。
オーリアッドは、明日と明後日は本来営業日ですが、お盆のためお休みさせていただきます。盆あけの最初の営業日は8月18日(水)です。
August 11, Wednesday 2004
それにしても暑い日が続いている。土曜以来のオーリアッド。中に入ると、夕方にもかかわらず、熱せられた空気が充満して、むっとしている。高い気温のせいばかりでなく、冷蔵庫や製氷機からも結構熱が出ている。窓を開け、外の空気を入れ、クーラーをつける。涼しくなるまでしばらく時間がかかる。
オーリアッドには丸テーブルが一つあってその上には販売用のCDや本が置いてある。先日『追憶の60年代カリフォルニア』を購入して下さった方から、今晩、この続きを本にしてほしいといわれる。この本は、サンフランシスコで乗った船が、ロサンゼルスとハワイを経由して、いよいよ横浜に近づくところで終わっている。その後については長野ジャーナルの『ぼくが出会った歌、ぼくが出会った人』に、毎月1回エッセイを書いている。ステージに置いてあるノート型パソコンで長野ジャーナルを出し、少し読んでもらう。しかし、ちょっとの時間で読める量ではない。質に関してはいざ知らず、3、4冊分の量はある。
箕輪町に住む「そーたくん」より数日前メールが入り、8月28日(土)にオーリアッドで有料ライブをやらせてもらえないかとの問い合わせがあった。何回かのメールのやり取りの後、初めての試みではあるが、ある程度の入場者を確保してもらうということで、ライブを行うことになった。何度か彼の歌を聞いたことがある。彼の歌はとても優しく、ほのぼのとしている。
「そーたライブ」
8月28日(土)6:00pm open 6:30pm start
前売り1000円 当日1200円
メール予約は: so-tamaru@inacatv.ne.jp
メール予約はオーリアッド miura@secondwind.jp でもOK。
August 7, Saturday 2004
ミッドナイト・ランブラーズを迎えての飛び入りライブ。最初、ぼくが「千の風」「父よ」「アルバカーキの空は今日も」などを歌い、その後、久々登場の甕(もたい)綾子さんのアイリッシュ・ハープの演奏。田中則男さんがギターでサポートに入る。まず一曲目は韓国の民謡「故郷の春」。この歌は堀内さんがよく歌う歌。美しいメロディ。その他、アイルランドの曲「Carolan's Welcome」「Ye Banks and Braes」など計4曲。
次に、堀金村の山岸豊さんが、ミッドナイト・ランブラーズの辰見昌宏さん(from 大阪)のマンドリン、ウクレレ、ハーモニカ、カズーなどのサポートを得て、5曲歌う。「I Shall Be Released」「雪の降る夜、小布施で」「遠距離恋愛」「木陰の季節」など。「遠距離恋愛」は山岸さんが前回オーリアッドで歌ったときにも聞いたが、今回の方が断然よかった。
その後、この二人にボーカルに田中郁夫さんが加わり、今晩のメインフィーチャー、ミッドナイト・ランブラーズが8曲演奏。基本的にブルーズのカバー、あるいはブルーズに影響を受けたオリジナル曲。印象に残った歌は、「メルセデス・ベンツ」「明日なき世界」。それにロバート・ジョンソンの歌のモンタージュのような「シカゴに行こう」。
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田中さんの熱唱には度肝を抜かれた。顔の表情、手振り身振り、歌の中に完全に入り込んでいる。「アルバカーキの空は今日も」に触発されて歌ったという「明日なき世界」は、バリー・マクガイアのカバーだが、9・11後に言葉を書いたとのことで、「ブッシュ株式会社」に対する辛らつな批判や皮肉に満ちている。そしてこの曲と最後の「ホンキートンク・ウーマン」では田中さんはギターも弾いた。
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次に堀内さんが、「故郷の春」「ついてないときの歌」「里の秋」の3曲。2曲目は初めて聞く歌。ちょっとまだ歌いこんでいない感じ。堀内さんのあと、赤羽孝昌さんが「山小屋のともしび」を歌う。朗々としたいい声である。
次に安藤則男さんが、「見張り塔からずっと」「愛麟(あいりん)」「俺がちびすけだった頃」「夫の舌はにがい」。2曲目は初めて聞く歌。4曲目は先週も歌ったが、アフリカの詩に曲をつけたものとのこと。彼の巧みなギターと「変わった言葉」の歌によって独自の世界を作りだしている。
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田中さんがステージにいるうちに甕さんに再度アイリッシュ・ハープの演奏をお願いする。遅れてきた方々にも是非聞いてほしかったのである。アイリッシュ・ハープを聞く機会はめったにないので。甕さんの演奏を何度か聞いたが、今晩の演奏が一番ストレートに心に届いた。アイリッシュ・ハープのみの演奏に徹したのがよかったのか。
次に、ぼくが「カムサハムニダ、イ・スヒョン」を歌う。東京から仕事で辰野にしばらく滞在しているというNさんが、遅れて聞きにきてくれたからである。Nさんはオーリアッドの雰囲気が気に入ってくれたようである。彼は仕事でいろんな地域へ行くようだが、「こんな店は日本中どこにもありません」。
そして最後に、練習を終えてからきてくれた「香月!」の3人に、無理やりお願いして歌ってもらう。彼らのステージでいつも最後に歌う「Ann〜ラストソング〜」。彼らが3人で、出演予定以外の土曜日にオーリアッドにきたのは初めて。今日の午後の大雨と雷のなせるわざ。このときすでに11時をまわっていた。その後しばらく歓談し閉店。
August 6, Friday 2004
「千の風」「碌山」を中心にしたCDを母の命日の11月12日までに作りたいと考えている。お忙しいエミグラントの関島さんに、協力していただけるかもしれないとのことで、今日は一日そのデモテープづくり。昨年購入した録音機材は使いこなせないので、SLECの秋澤さんからお借りした古いラジカセで録音。今晩7時半、速達でお送りした。ぼくのワーナーから出た『私は風の声を聞いた』『漂泊の友』のエンジニアだった石崎さんからも助けていただけるとのこと。ありがたいことである。
11月12日はあくまでも目標で、遅れる可能性もある。というのは、もっと早くデモテープをお送りすべきところ、ぼくの都合で大幅に遅れてしまったからである。また関島さんも石崎さんも忙しい方々だし、それに、やはり納得したいものを作りたいので。
「千の風」のCDがほしいという声をよく耳にする。今晩も、お客さんの一人から「ガールフレンドが三浦さんの<千の風>を聞いて是非CDがほしいといってましたが、まだですか」と聞かれた。
郵便局から戻り、オーリアッドに入ると聞いたことのある音楽が流れていた。最初誰だかわからなかった。「裏町の唄」が流れてきて思い出した。沖縄の知念良吉さんだ。知念さんには一度、東京で会ったことがある。そのとき、昔、辰野に住んでいたことがあると聞いて驚いた。ある辰野の企業で働いていたらしい。休業中のオーリアッドの前も何度も通ったことがあるとか。是非一度歌いにきてほしいシンガーである。
明日は「飛び入りライブデー」。堀金村の山岸さんと、彼の京都時代のふたりの友人からなる「ミッドナイトランブラーズ」がメインフィーチャーで、松本の安藤則男さんからも歌いにくるとの連絡があった。おそらく赤羽真理さんも、新曲「千両梨の実」を歌いにきてくれるだろう。それに諏訪の堀内さんも。
August 5, Thursday 2004
前半、セカンドウインド英語教室。後半、店に入る。久しぶりにディラン好きの瀬戸さんがきた。仕事が忙しく夜が遅いとか。11時過ぎになることもあるらしい。夜遅く徳本水の前を通るので最近よく水を汲んで飲んでいるとのこと。
以前一時期、オーリアッドでも徳本水の水でコーヒーを入れていた。最近やめたのは、簡単に水が汲めなくなったからである。徳本水がますます知られるようになり、狭いけれども駐車場が整備され、たくさんの人が水を汲みにくるようになった。多いときは4、5台の車が狭い駐車場に止まっている。一人でいくつものポリタンクに汲んでいる人もいる。日に何回となく徳本水の前を通るが、車が止まっていないときのほうが珍しくなった。最近はオーリアッドから家に戻る11時過ぎにも車が止まっていることがある。ひょっとして瀬戸さんの車だったりして。
瀬戸さんはディランに詳しい。みうらじゅんさん選曲のディランのアルバム『アイデン&ティティ』に話が及ぶ。ぼくが「このアルバムはとてもいい。でも選曲は初心者向きでないかもしれない。特に<フット・オブ・プライド>は難しい」というと、彼は「30周年記念コンサート」のアルバムでルー・リードが歌っている「フット・オブ・プライド」が好きだという。それを受けて、ぼくがあのアルバムではやはりジョニー・ウインターの「ハイウエイ61・リビジッティド」が好きだという。そんな風に、小さな町に住むふたりのディラン・フリークのとりとめのない話が延々と続く。
最後に瀬戸さんにふあさんからもらった大工哲弘さんのオーリアッドでのライブ盤を聞いてもらう。ふたりの結論―ディランと大工哲弘には共通性がある。それは声の魅力である。
August 4, Wednesday 2004
先週土曜日以来のオーリアッド。今晩は先ず、先週ふわさんからいただいた大工哲弘さんのオーリアッドでのコンサートのCD-Rを聞く。沖縄民謡は除いて、「標準語励行の歌」「国民の煙草、新生」「お富さん」など、聞いてすぐに理解できる「日本語」の歌と、大工さんの語りを中心に編集したもの。客席で録音しているので、聴衆の反応がはっきりと伝わってきて面白い。
しばらくして、エリック・クラプトンの好きな赤羽夫妻が入ってきた。スピーカーからは『スロー・トレイン・カミング』が流れていた。赤羽さんはすかさず、「ディランですね」。そのアルバムが終わったあと、『Time Pieces-The Best of Eric Clapton』をかける。一曲目の「アイ・ショット・ザ・シェリッフ」が流れてくると赤羽さんは嬉しそうににやっと笑う。ぼくが好きなのは、このアルバムの9曲目「プロミセズ」。
その後、夏の帰省客かなと思われる見慣れぬお客さんが入ってきた。テーブルにすわりながら「日曜日から火曜日までは何をしているんですか」という。外の掲示を見てきたのに違いない。どう答えていいかわからず口ごもる。営業時間が少ないので一体何をしている人かと思ったに違いない。因みに、オーリアッドの営業時間は、水曜日から土曜日までの午後6時から11時まで。
彼のTシャツの胸にはジョン・レノンの写真がプリントされていた。オーリアッドに南の壁に飾ってある写真と同じだ。そのことを指摘すると、彼は立ちあがりその写真を見に行ったあと、Tシャツはもう何年も前にニューヨークで購入したものだという。
話を聞くと、彼は帰省客ではなかった。ビジネス・トリップで辰野にきていて、土曜日にはまだ辰野にいるので飛び入りライブを聞きにきてくれるとのこと。ひょっとして音楽をやっているかなと思ったが、自分では演奏したり歌ったりはしないらしい。